同じ人のカルテに1型と2型糖尿病の記載があった場合、どちらが本当?

医療に初めて携わる人が糖尿病という単語に出会ったとき、最初に戸惑うのが、糖尿病に「1型」と「2型」の分類があることです(その他にもステロイド性などありますが、多くは1型と2型です)。ありがちなイメージでは、1型の人は先天的な人が多く、2型の人には後天的な人が多いので、生まれつきか、そうじゃないかで1型と2型を分けるのかと思いがちですが違います。

あくまで1型と2型を決めるのはインスリンを分泌しているかどうかで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞においてインスリンがまったく分泌しなくなった状態の人が1型で、わずかながらでも分泌がされている人は2型であるわけですね。もう少し詳しくいえば、1型はB細胞の破壊でインスリンが出なくなるもので、2型は肝臓や筋肉でのインスリンの効果の低下によるものになります。

ただ2型の人でも、長い期間、高血糖状態であったり、内服薬を服用し続けたために、膵臓が疲弊してしまえば、インスリンがもはや分泌されなくなり、2型から1型になる場合もあるというわけですね。

何度も入退院を繰り返している患者で、電子カルテの中で2型の記述と1型の記述がある人は、こうした経過を辿った人である可能性が高いです。

また2型糖尿病と思いきや、あとから1型糖尿病の亜型であると判明するタイプの糖尿病もあります。緩徐進行性1型糖病病(SPIDDM)というものです。

緩徐進行性1型糖尿病(SPIDDM)は、主に自己免疫による攻撃によってβ細胞が破壊されて、インスリンが出なくなることで糖尿病を発症するので、1型に含まれるのですが、ケトアシドーシスに陥るケースは少なく、2型糖尿病のような発症形式をとります。

つまり形の上では1型なのですが、1型糖尿病と違って、まだ膵臓のβ細胞が全滅しておらず、インスリンが自分の膵臓β細胞からそこそこ出ている状態なんですよね。

もちろん経過とともに、緩徐進行性1型糖尿病(SPIDDM)の患者は、緩やかにインスリン分泌能が低下させていき、そのうちにインスリン療法が必要となって、1型糖尿病の患者の状態と変わらなくなるのですが、緩徐進行性1型糖尿病(SPIDDM)というのは、その病態への道筋が通常の1型とは違うというややこしいタイプなんですね。

以上まとめると、同じ人のカルテに1型と2型の記載があった場合は、2型⇒1型の経過を辿った人か、もしくは2型と診断された後に、緩徐進行性1型と診断し直された人かを確認する必要があると思います。

ちなみに緩徐進行性1型糖尿病は、ICD10上は、1型糖尿病と同じ、E10.0-9をコードします。