医療に関わるほとんどの人を悩ますのが医療略語ですね。とにかく数が多すぎて、覚えるところが良くわかりませんね。特に循環器科など略語がオンパレードな科はもはや日本語を読んでいるのかどうかも怪しく感じてきてしまいます。
しかも同じ略語で科や文脈によって意味が違うとかふざけたものも多いですしね。ただ実際医者も全部を覚えているというわけではなく、大抵の場合は、基本的なものと自分の専門分野を中心に、という感じのようです。
さて、前置きが長くなりましたが、常にわたしたちを悩ませる医療略語。その中で、わたしが医療事務を始めた初期に大いに悩ませたのか、「HTN」という略語です。
これ、科に関係なく、やたらとカルテに書かれてくる略語なんですよね。もちろん、わからないからいいやではなく、まずはキチンと略語辞典で調べてみました。そしてそこに書かれていたのは、
HTN:HyperTensitive Nephropathy = 高血圧腎症
フムフムなるほど、高血圧によって腎臓が悪くなったというわけか。と一瞬、納得。
でも、カルテのどこにも尿異常の所見がないんですよね……しかも「HTN」と書かれているほかのカルテを見てみても、大抵は高血圧で腎臓が悪くなったという記述はなく、そもそも腎臓が悪くない人も多い。それでどうして腎症???
それで、さらに調べてみると、わかったのは、「HTN」には高血圧腎症という意味のほかにただの「高血圧」を示す意味もあるという驚愕の事実でした。
HTN:HyperTeNsion ⇒ 高血圧
というわけですね。ていうか、一つの綴りの中で三つに抜き出して略語とかわかるはずないよ……。
でも確かに「高血圧」という意味なら、様々なカルテに書かれていてもおかしくないんですよね。「高血圧」というば、「HT」という略語がポピュラーかと思っていたのですが、結構「HTN」と書く医者もたくさんいるんですよね。
略語辞典をそのまま鵜呑みにしてはいけないことを思い知ったエピソードでした。