胎児機能不全(胎児ジストレス)

 
やまねこ
以前は胎児仮死と呼ばれていたが、適切ではないということで改められたニャ

【胎児機能不全(胎児ジストレス)】

胎児機能不全(胎児ジストレス)とは、胎児が子宮内において、呼吸ならびに循環機能が障害された状態のことをいいます。つまり、おなかの中の胎児が「子宮の中で元気な状態(酸素不足になっていない)」と言い切れない場合を指し、また「実際には苦しい状態でなく、元気だった」という可能性を含んでいます。

胎児機能不全(胎児ジストレス)は、妊娠中・分娩中のいずれの場合にも見られ、顕性と潜在性に分類されます。顕性の場合は、胎児心拍数基線の異常を来たすことをいいますが、潜在性の場合は、子宮内胎児発育不全を伴うことが多いです。

またかつて日本では、胎児機能不全(胎児ジストレス)は胎児仮死という言葉が使用されていましたが、これは適切ではないということで改められました。

【原因】

胎児機能不全(胎児ジストレス)の原因は、主に胎児の酸素不足と考えられています。

《母体因子》

出血、仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群、麻酔、降圧薬投与などによって母体が低血圧状態になり、絨毛間腔の循環血液量が減少してしまうことが原因となります。また母体の心疾患、呼吸器不全などによる低酸素血症も原因となります。

《子宮因子》

陣痛の異常(過強陣痛)、子宮破裂など

《臍帯因子》

臍帯の下垂・脱出、強度の巻絡、過捻転、真結節、臍帯卵膜付着など臍帯異常などのほか、羊水過少などに伴う臍帯圧迫も原因となります。

《胎盤因子》

妊娠中毒症、過期妊娠、SLE(全身エリトマトーデス)などによる高度の胎盤の梗塞や発育不全、常位胎盤早期剥離など

《胎児因子》

胎児貧血、先天性心疾患など

これらの中でも常位胎盤早期剝離は余地が難しく、脳性麻痺の最も大きな原因になるため、どうにか早期発見や予測が出来ないかと世界中で研究がされていますが、2018年現在、まだ予防法などは確立されていません。

【治療】

胎児機能不全(胎児ジストレス)の原因となる病気の治療が行われることはほとんどありません。顕性胎児機能不全(胎児ジストレス)の場合は、母体へ充分な酸素を投与し、すみやかに胎児の娩出をはかります。娩出の方法には、吸引分娩や帝王切開などがあります。

〈ICD分類〉

胎児機能不全(胎児ジストレス)⇒ O68.8

出生時仮死 ⇒ P21.0-9