【妊娠悪阻とは?】
妊娠悪阻とは、つわり症状が悪化して食事摂取が困難となり、妊婦に栄養障害や代謝障害をきたし加療を必要とする状態になったことをいいます。症状が強い場合は、重症妊娠悪阻と呼ばれます。
妊娠悪阻は妊婦の約0.5%に発症し、適切な治療を受けないと脳や肝臓に障害を引き起こすなど重篤な合併症を生じることがあります。
妊娠悪阻は母体の代謝障害、特に頻回の嘔吐、食事摂取不能、多量のブドウ糖輸液は、ビタミンB₁欠乏を誘発し、ウェルニッケ脳症の誘因となります。この場合、母体死亡に至る例もあります。
《症状》
第1期:頑固な悪心、嘔吐を主徴とする時期
第2期:嘔吐に加えて代謝障害による全身症状が現れる時期
第3期:脳症状、神経症状の現れる時期
【原因】
妊娠悪阻は妊婦の半数以上が経験されるとされるつわりが重症化したものです。
どのようなメカニズムでつわりが引き起こされるのかはわかっておりませんが、妊娠に伴って女性ホルモンの一種であるエストロゲンや、着床することで分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と呼ばれるホルモンの分泌量が急激に上昇することが原因の一つと考えられています。
発症のリスク要因として、初めての妊娠であることや、多胎妊娠、肥満、摂食障害の既往、遺伝的要因、甲状腺亢進症、胞状奇胎などが挙げられます。また妊娠前から胃腸障害、肝機能障害、自律神経系の異常などを認める人でも、その発生頻度が高いといわれています。
【治療】
つわりに対しては、心身の安静と休養、少量頻回の食事摂取、水分補給を促し重症化を防ぎます。妊娠悪阻を根本的に治す治療法はなく、失われた水分や電解質を補い、吐き気が強い場合は、適宜制吐剤(吐気止め)などを使用する対処療法が行われます。
〈ICD分類〉
軽度妊娠悪阻 ⇒ O21.0
代謝障害を伴う妊娠悪阻 ⇒ O21.1
重症妊娠悪阻 ⇒ O21.1
後期妊娠悪阻 ⇒ O21.2
妊娠に合併するその他の嘔吐 ⇒ O21.8
妊娠悪阻NOS ⇒ O21.9