【羊水過多症とは?】
羊水は、妊娠早期から存在しており、妊娠後半期になると胎児の尿が主成分になり、その一方で胎児が排尿された羊水を嚥下することでその量が調節されています。
羊水量は妊娠の進行とともに増加して妊娠32週前後でピークに至り、そのあとは徐々に減少していきます。生理的な羊水量の範囲を大きく超える場合を羊水過多(800㎖以上)、これにより子宮が大きくなって圧迫感や子宮収縮、子宮頸管長の短縮などの症状が出現している状態を羊水過多症といいます。
羊水過多は、全妊娠の約1~2%に合併するといわれています。
【原因】
《胎児側の原因》
羊水の産生量が多くなる場合:胎児の心拍出量や腎血流量が増加する時に多くなると考えられています。
羊水の嚥下がうまく出来ていない場合:飲み込む力そのものが弱くなる場合と、嚥下しても上部消化管が閉鎖しているために吸収されない場合とがあります。上部消化管が閉鎖する疾患としては食道閉鎖や十二指腸閉鎖、飲み込む力が弱くなる疾患には染色体異常、神経疾患、筋疾患などがあります。
《母体側の原因》
糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病が最も重要なものとして挙げられます。コントロール不良の糖尿病があると、母体だけでなく胎児も高血糖になります。その結果胎児の尿産出量が増加し、羊水過多になると考えられています。
【症状】
母体の異常:子宮の肥大、腹部腫大、子宮底上昇、横隔膜挙上、胃の圧迫、呼吸困難などがみられます。また妊娠高血圧症候群を合併しやすくなります。
胎児の異常:早産、低出生体重児、IUGR(子宮内胎児発育不全)、先天奇形、胎位異常が認められることがあります。
分娩の異常:前期破水、常位胎盤早期剥離、微弱陣痛、弛緩出血などが起こりやすくなります。
【治療】
症状が軽度であれば、まずは切迫早産の治療に準じた、入院による安静や子宮収縮抑制薬の投与などの保存的な治療を試みます。子宮が大きくなって圧迫感や呼吸困難感が出現するような場合には、羊水除去を行う場合もあります。糖尿病によるものや特発性のものでは、羊水除去を必要とするような高度な羊水過多になることは滅多にありません。
〈ICD分類〉
羊水過多症 ⇒ O40