水頭症

 
やまねこ
水頭症には機能的な分類と発症期間による分類があるニャ

【水頭症とは?】

脳は、外部からの衝撃がダイレクトに加わるのを避けるために、脳脊髄液に浮かんだ状態で存在しています。脳脊髄液は、脳の中にある脳室と呼ばれる空間で作られ、脳や脊髄の表面に排出されると、循環しながら流れて毛細血管に吸収されていくと考えられています(側脳室からモンロー孔を通過し、第三脳室から中脳水道を経て第四脳室に至り、そこから頭蓋内・脊髄腔内くも膜下腔へと吸収される)。

水頭症とは、この脳脊髄液が何らかの原因(脳腫瘍、脳出血、くも膜下出血、髄膜炎など)で循環障害を起こし、頭蓋内に脳脊髄液が貯留し、脳室が大きくなり様々な症状を起こしてしまう病気です。

【水頭症の機能的な分類】

脳脊髄液の流れが障害(閉塞・狭窄)されることによって起こる水頭症を非交通性(閉塞性)水頭症と呼び、脳表のくも膜下腔での脳脊髄液の停滞や生産、吸収問題があって起こる水頭症を交通性水頭症と呼びます。

《非交通性(閉塞性)水頭症》

脳脊髄液は、脳の中の脳室と呼ばれる脈絡叢で産生され、脳側室、第三脳室、第四脳室に流れたのちに、脳や脊髄の表面にあるくも膜下腔に流れ込んで循環していきます。

非交通性(閉塞性)水頭症は、この経路のうち脳室内での脳脊髄液の流れが悪くなることで引き起こされます。

第三脳室と第四脳室の通り道である中大脳道が生まれつき狭くなっていたり(中脳水道狭窄)、脳室内部の腫瘍や出血などが主な原因として挙げられます。

《交通性水頭症》

交通性水頭症は、脳や脊髄を覆うくも膜下腔が狭くなっていたり、脳脊髄液の吸収がうまく出来なくなったりすることによって引き起こされる水頭症です。成人に多く見られるタイプの水頭症になります。

主な原因としては、頭蓋内出血や髄膜炎、脳腫瘍、生まれつきの脳の形態異常などが挙げられます。

【症状の発現期間の違いによる分類】

急激に脳脊髄液が貯留し(脳室拡大)、頭蓋内圧が急激に上昇し、頭蓋内圧亢進症状(頭痛や嘔吐)、意識障害を来たすものを急性水頭症と呼びます。

一方、脳脊髄液の貯留(脳室拡大)がゆっくりであるゆえに頭蓋内圧亢進が来たさず、頭痛や嘔吐、意識障害などがないままに、脳室の拡大によって脳が圧迫され、徐々に脳の機能が低下していってしまうものを正常圧(慢性)水頭症といいます。

【特発性正常圧水頭症と続発性正常圧水頭症】

正常圧水頭症は、さらに特発性正常圧水頭症続発性正常圧水頭症の二つのタイプに分類されます。

《特発性正常圧水頭症(30~40%》

原因がハッキリわからない正常圧水頭症を特発性正常圧水頭症と呼びます。高齢者に多く発症することから、加齢による影響が大きいことが示唆されています。

《続発性正常圧水頭症(60~70%)》

くも膜下出血や髄膜炎、頭部外傷など何らかの先行疾患の後に発症する正常圧水頭症を続発性正常圧水頭症と呼びます。

【治療】

残念ながら現在水頭症に有効な内科的治療はありません。水頭症の外科的治療は、症状を引き起こしている原因によって選択されます。手術方法としては、基本的にドレナージ術、シャント術、また病態によっては内視鏡的第三脳室開窓術が行われます。

また可能であれば、水頭症の原因となっている病変を外科的に摘出することもあります。しかし、先天性水頭症では、摘出可能な病変を認めることは少ないです。

《脳室ドレナージ術》

急性水頭症に対して頭蓋内圧をコントロールする目的で行う一時的な手術です。脳室内にドレナージチューブを挿入し、体外に脳脊髄液を排出させます。頭蓋内圧亢進により意識障害を来たしているような場合に救命目的で行います。

《シャント術》

水頭症の治療において広く行われています。拡大した脳室にカテーテルを挿入し、髄液を他の体腔に流して脳圧をコントロールする方法です。

通常、脳室腹腔シャント(V-Pシャント)を選択します。その他に脳室心房シャント(V-Aシャント)、腰椎腹腔シャント(L-Pシャント)などがあります。

最近、日本では正常圧水頭症などの交通性水頭症ではL-Pシャント術が行われることが増えてきています。

《内視鏡的脳室底開窓術》

冠状縫合近傍の頭蓋骨に小さな孔をあけ、ここから内視鏡を側脳室さらに、モンロー孔を介して第三脳室底を穿破し、脳室とくも膜下腔の交通を樹立しようという手術です。非交通性水頭症のみが適応となります。

〈ICD分類〉

交通性水頭症 ⇒ G91.0

非交通性(慢性)水頭症 ⇒ G91.1

正常圧水頭症 ⇒ G91.2

外傷後水頭症 ⇒ G91.3

水頭症NOS ⇒ G91.9

硬膜下水腫 ⇒ G91.9

脳水腫(=水頭症)⇒ G91.9

〈ICD9-CM〉

脳室腹腔シャント(V-Pシャント)⇒ 02.34

脳室心房シャント(V-Aシャント)⇒ 02.32

脳室ドレナージ術 ⇒ 02.39

脳室シャントの交換術 ⇒ 02.42

脳室シャントの除去術 ⇒ 02.43

腰椎くも膜下腔腹腔シャント(L-Pシャント)⇒ 03.71

脊髄腔シャントの修正術 ⇒ 03.97

脊髄腔シャントの除去術 ⇒ 03.98