【高次脳機能障害とは?】
人間の脳には、呼吸機能や循環機能などの生きていくために必要な機能に始まり、知的能力、運動能力、視覚、聴覚などの基本的な機能、さらに知識に基づいて行動を計画し、実行する高度な機能があります。高次機能とは、この人間における「高度な機能」のことをいい、高次脳機能障害とは、ケガや病気によって脳に損傷を負ってしまったがために、この高度な機能に障害が出て、日常生活や社会生活に支障をきたす状態のことをいいます。
主な症状には、失語、半側空間無視(損傷した脳の反対側を見落とすなど)、記憶障害、注意障害、遂行機能障害(計画が立てられないなど)、社会的行動障害(自己中心的になるなど)などがあります。
【原因】
原因の約8割は脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患)、約1割が頭部外傷とされています。残りの1割が脳腫瘍、脳炎などの感染症、正常圧水頭症、自己免疫疾患、薬物中毒、多発硬化症などの様々な病気によって引き起こされます。
【高次脳機能障害診断基準】
高次脳機能障害には、厚生労働省によって以下のように診断基準が定められています。
Ⅰ.主要症状等
① 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾患の事実が確認されている。
② 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
Ⅱ.検査所見
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認出来る。
Ⅲ.除外項目
①脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(1-2)を欠く者は除外する。
②診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
③先天性疾患、周産期における脳腫瘍、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。
Ⅳ.診断
①Ⅰ~Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
②高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾患の急性期症状を脱した後において行う。
③神経心理学的検査の所見を参考にすることが出来る。
など、診断基準のⅠとⅢを満たす一方で、Ⅱの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかに出来ない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害として診断されることがあり得る。
また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。
【治療】
日常生活、社会生活への適応力を高めていくリハビリテーションが主体となります。
〈ICD分類〉
高次脳機能障害 ⇒ F06.9