【食道の仕組み】
食道は咽頭と胃を結ぶ筒状の臓器です。食道自体には吸収の機能はなく、口から入った食べ物や飲料を胃まで輸送する役割を果たしています。喉に近い方から頚部食道(切歯から15~20cmまで)、胸部食道(さらに胸部上部(切歯から20~25cm)、胸部中部(切歯から25~30cm)、胸部下部(切歯から30~40cm)に分かれる)、腹部食道(切歯より約40㎝)と呼ばれる三つの部位に分類されます。
食道の壁は、内側から外側に向かって粘膜(粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板)、粘膜下層、固有筋層、外膜に分かれています。
【食道がんの組織分類】
扁平上皮細胞がん:食道の内側にある薄くて平坦な細胞である扁平上皮細胞中に生じるがんです。このがんは食道の上部および中央部に最も頻繁に発生しますが、食道に沿ってあらゆる場所に発生する可能性もあります。類表皮がんと呼ばれることもあります。日本人の食道がんのタイプは90%以上このタイプです。
腺がん:腺細胞中に発生するがんです。食道内側の腺細胞は粘液などの体液を産生し、放出します。通常、腺がんは胃の付近の食道下部に発生します。欧米人に多いタイプです。
【食道がんの原因】
食道がんが発生する主な要因は、喫煙と飲酒です。特に日本人に多い扁平上皮がんは、喫煙と飲酒との強い関連があります。またバレット食道も食道がんの要因になると言われています。
ステージ0:がんが粘膜内にとどまり、リンパ節転移や他臓器への転移を伴わないもの ⇒ 内視鏡的切除術が推奨
ステージⅠ:がんが粘膜下層にとどまり、リンパ節転移や他臓器への転移を伴わないもの ⇒ 外科的手術もしくは化学放射線療法が推奨
ステージⅡ-Ⅲ:がんが粘膜下層を超えて、固有筋層もしくは食道外膜まで達していた場合や、リンパ節転移を伴うもの ⇒ 化学放射線療法が推奨
ステージⅣa:遠方のリンパ節に転移を伴うもの ⇒ 化学放射線療法が推奨
ステージⅣb:他臓器への転移を伴うもの ⇒ 化学療法が推奨
【食道がんのTNM分類】
《T因子(がんの広がり)》
T1a:がんが粘膜内にとどまる。
T1b:がんが粘膜下層にとどまる。
T2:がんが固有筋層にとどまる。
T3:がんが食道外膜に広がっている。
T4a:がんが食道周囲の組織(胸膜、心膜、横隔膜など)まで広がっているが、切除できる。
T4b:がんが食道周囲の組織(大動脈、気管、気管支炎)まで広がっていて、切除できない。
《N因子(リンパ節転移)》
N0:リンパ節転移がない。
N1:第1群リンパ節のみに転移がある。
N2:第2群リンパ節まで転移がある。
N3:第3群リンパ節まで転移がある。
N4:第4群リンパ節まで転移がある。
※食道の周りや近くのリンパ節を、がんのある場所別の転移の頻度が高いものから低いもの順で、1群、2群、3群、4群と分類します。
《M因子(遠隔転移)》
M0:遠隔転移がない。
M1:遠隔転移がある。
〈ICD分類〉
食道上皮内がん(深達度がT1a、もしくはステージ分類0) ⇒ D00.1
食道がん ⇒ C15.0-9
食道胃接合部がん ⇒ C16.0