【子宮頸がん】
子宮は女性の骨盤内にある臓器で、下部の筒状の「子宮頸部」と、上部の袋状の「子宮体部」に分けられます。それぞれの部位に生じるがんを「子宮頸がん」「子宮体がん」といいます。
子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占めます。以前は発症のピークが40~50歳代でしたが、現在は30歳代後半がピークとなっています。
【原因】
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であることがわかっています。HPVはありふれたウイルスであり、性交経験がある女性の過半数は、一生に一度は感染機会があると言われています。なお、HPVには100種類以上の型があり、一般にハイリスク型(16、33、52、58型など)とローリスク型(6、11型など)に分けられます。またHPVに感染しても、90%の人においては免疫の力でウイルスが自然に排除されます。ただ10%の人ではHPV感染が長時間持続し、このうち自然治癒しない一部の人は異形成と呼ばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行します。
【分類】
《子宮頸がんの病期(ステージ)分類》
ⅠA期:顕微鏡でのみ診断出来る微小ながん
ⅠB期:診察で明らかになるがんを認めるが、子宮頸部に限局する。
ⅡA期:膣の上方までのがんの浸潤がある。
ⅡB期:子宮周囲の組織にがんの浸潤があるが、骨盤壁までは達していない。
ⅢA期:膣の下方までがんの浸潤がある。
ⅢB期:子宮周囲の組織への浸潤が骨盤壁まで達する。
ⅣA期:膀胱、直腸の粘膜までがんの浸潤がある。
ⅣB期:骨盤外の臓器に転移する。
《子宮頸がんのTMN分類》
[原発腫瘍:T]
Tis1:原発腫瘍の広がりを評価出来ないもの。
T0:原発腫瘍を認めない。
Tis:浸潤前がん
T1:がんが子宮頸部に限局するもの
T1a:浸潤が組織学的にのみ診断出来る浸潤がん
※肉眼的に明らかな病巣は、たとえ表層浸潤であってもT1b期とする。浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5㎜以内で縦軸方向の広がりが7㎜を越えないもの。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜より計測して5㎜を越えないもの。浸潤の深さは、隣接する最も浅い上皮乳頭から浸潤最深部までを計測する。
T1a1:間質浸潤の深さが3㎜以内で、広がりが7㎜を越えないもの。
T1a2:間質浸潤の深さが3㎜を越えるが5㎜以内で、広がりが7㎜を越えないもの。
T1b:臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかでないがT1aを越えるもの。
T1b1:病巣が4㎜以内のもの。
T1b2:病巣が4㎜を越えるもの。
T2:がんが子宮頸部を越えるが、骨盤壁には達していないもの。がんが膣に進展しているが、その下1/3には達していないもの。
T2a:子宮傍結合織浸潤のないもの。
T2b:子宮傍結合織浸潤を伴うもの。
T3:がんが骨盤壁に達しているもの。直腸疹で腫瘍と骨盤壁の間に浸潤がない。がんが膣の下1/3を侵しているもの。がんによると思われる水腎症または無期能腎がみられるもの。
T3a:骨盤壁には進展していないが、膣の下1/3を侵しているもの。
T3b:骨盤壁に進展しているが、水腎症または無期能腎のあるもの。
T4:がんが小骨盤腔を越えて進展しているが、膀胱または直腸の粘液を臨床的に侵しているもの。
[所属リンパ節:N]
NX:所属リンパ節の評価が不可能。
N0:所属リンパ節に転移を認めない。
N1:所属リンパ節に転移を認める。
[遠隔転移:M]
MX:遠隔転移の評価が不可能。
M0:遠隔転移を認めない。
M1:遠隔転移を認める。
M2:傍大動脈リンパ節に転移を認める。
【治療】
《臨床進行期と治療》
前がん病変、ⅠA1:レーザー蒸散術、子宮頸部円錐切除術、単純子宮全摘術(準広汎子宮全摘術)
ⅠA2、ⅠB:広汎(準広汎)子宮全摘術+リンパ節郭清術(病理によって、術後化学療法・放射線療法)
ⅡA、ⅡB:同時化学放射線療法
ⅢA、ⅢB、ⅣA:同時化学放射線療法
ⅣB:化学療法、緩和医療
レーザー蒸散術:病変がある部分を含めてレーザーで焼く。組織診断は出来ない。
子宮頸部円錐切除術:子宮頸部を円錐形に切り取る。組織診断が出来る。
単純子宮全摘術:子宮(+両側卵巣、卵管)を摘出する。
広汎子宮全摘術:子宮周囲の組織、膣、リンパ節を含めて子宮(+両側卵巣、卵管)を摘出する。
同時化学放射線療法:放射線治療はがん組織を破壊し、がんを小さくする効果がある。化学療法と併用する方が治療効果は高い。
〈ICD分類〉
子宮頸部上皮内がん ⇒ D06.0-9
子宮の性状不明の新生物 ⇒ D39.0
子宮頸部がん ⇒ C53.0-9
子宮がんNOS
〈ICD9-CM〉
子宮頸部円錐切除術 ⇒ 67.2
腹式子宮全摘術 ⇒ 68.4
膣式子宮摘出術 ⇒ 68.51-9
腹式広汎子宮全摘出術 ⇒ 68.6
膣式広汎子宮全摘出術 ⇒ 68.7
両側卵管卵巣摘出術 ⇒ 65.61-4