精巣は男性の生殖器で、精子やテストステロンといった男性ホルモンを産生する臓器です。下腹部の陰嚢内に収まっており、精巣上体が附属しています。
精巣がんは精巣内の精子を造る精細胞上皮細胞から発生し、比較的若い人に起きるがんです。精巣がんになりやすいリスク因子として、停留精巣や片側の精巣がんの既往、家族歴などが挙げられます。
細胞の種類によって、大きくセミノーマと非セミノーマに分かれており、後者の方が転移を起こしやすく、悪性の経過をとりやすいと言われています。
【精巣がんの病期分類】
《TNM分類》
[T:原発腫瘍の広がり]
Tx:原発腫瘍が評価出来ない。
T0:原発腫瘍を認めない。
Tis:精巣管内胚細胞腫瘍(上皮内癌)
T1:リンパ管/脈絡侵襲を伴わない精巣および精巣上体に限局する腫瘍、腫瘍は精巣上体白膜に浸潤するが、鞘膜に浸潤しない。
T2:リンパ管/脈絡侵襲を伴う精巣および精巣上体に限局する腫瘍、または精巣上体白膜を越えて進展し鞘膜に浸潤する腫瘍。
T3:脈管/リンパ管侵襲の有無に関わらず、精索に浸潤する腫瘍
T4:脈管/リンパ管心中の有無に関わらず、陰嚢壁に浸潤する腫瘍
[N:リンパ節転移の有無]
N0:所属リンパ節転移がない
N1:最大径2㎝以下の所属リンパ節転移(単発または多発)
N2:最大径が2㎝を越えるが5㎝は越えない所属リンパ節転移(単発または多発)
N3:最大径5㎝以上の所属リンパ節転移
[M:遠隔転移の有無]
M0:遠隔転移がない
M1:遠隔転移がある
M1a:所属リンパ節以外のリンパ節または肺転移
M1b:リンパ節または肺以外の遠隔転移
《病期分類》
Ⅰ型:転移がない
Ⅱ型:横隔膜以下のリンパ節にのみ転移がある
ⅡA:転移巣が5㎝未満
ⅡB:転移層が5㎝以上
Ⅲ期:遠隔転移
Ⅲ0:腫瘍マーカーが陽性であるが、転移巣不明
ⅢA:横隔膜より上部のリンパ節に転移
ⅢB:肺に転移
ⅢB1:片側の肺の転移が4個以下かつ2㎝未満
ⅢB2:片側の肺の転移が5個以上または2㎝以上
ⅢC:肺以外の臓器にも転移がある
【治療法】
《手術》
精巣がんの診断が確定したらまず高位精巣摘除術を行います。精巣、精巣上体、精索を一塊として摘出します。
また化学療法後に、後腹膜リンパ節を摘出(後腹膜リンパ節郭清術)することがあります。
《放射線治療》
セミノーマでは放射線治療が特に有効で、Ⅰ期のセミノーマの再発予防、Ⅱ期のセミノーマの比較的小さなリンパ節転移に対し行うことがあります。
《化学療法》
精巣がんは化学療法の効果が非常に高いとされています。
治療は複数の作用の異なる抗がん剤を組み合わせて行います。(BEP療法、TIP療法、GEMOX療法など)
【治療法の選択】
《セミノーマの場合》
Ⅰ期:経過観察、予防的放射線照射、カルボプラチン単剤で1-2コースの化学療法
ⅡA期:放射線照射、化学療法(BEP3コース/EP4コース)
ⅡB期以上:化学療法(BEP3コース/EP4コース)
《非セミノーマの場合》
Ⅰ期:
脈絡侵襲なし:経過観察、後腹膜リンパ節郭清
脈絡侵襲あり:経過観察、BEP2コース、後腹膜リンパ節郭清
ⅡA期:
2㎝未満でマーカー陰性:後腹膜リンパ節郭清(経過観察)
予後良好:BEP3コースまたはEP4コース
予後中間/不良:BEP4コース
ⅡB期以上:
予後良好:BEP3コースまたはEP4コース
予後中間/不良:BEP4コース
〈ICD分類〉
停留精巣がん ⇒ C62.0
異所性精巣がん ⇒ C62.0
下降精巣がん ⇒ C62.1
陰嚢精巣がん ⇒ C62.1
精巣がんNOS ⇒ C62.9
〈ICD9-CM〉
高位精巣摘除術 ⇒ 62.3
後腹膜リンパ節郭清 ⇒ 40.59