尿路上皮がん

 
やまねこ
尿路上皮がんは、発生部位によって膀胱がん、腎盂がん、尿管がん、尿道がんと呼ばれるニャ。しばしば部位をまたいで多発し、再発するニャ
 

【尿路上皮がんとは?】

腎臓で産生された尿は腎盂に排泄され、尿管を通って膀胱に運ばれます。そして膀胱に一定量の尿が溜まると尿は尿道から排出されます。

この腎盂から尿道までの尿の通り道を「尿路」と呼び、尿路は亀頭の先端部の尿道以外すべて尿道上皮という細胞で覆われています。

尿路上皮がん(移行上皮がん)とは、この尿路上皮という細胞が癌化したもので、それぞれ発症した部位によって、上部尿路がん(腎盂がん、尿管がん)、膀胱がん、尿道がんに分けられます。

【尿路上皮がんの発生頻度】

発生頻度は、膀胱がん>上部尿路がん(腎盂がん、尿管がん)>尿道がんの順です。

組織型は尿路上皮がんが約95%(その他は、扁平上皮がんや腺がんなど)で、しばしば多発し、再発を繰り返すのが特徴です。上部尿路(腎盂、尿管)にがんがある場合、その約30%で膀胱がんが発見され、逆に膀胱がんの5%以下で上部尿路のがんが発見されることもあります。

【膀胱がんについて】

膀胱がんには以下の4つのタイプがあります。

筋層非浸潤性膀胱がん腫瘍が粘膜に留まり筋層に達しないもの

筋層浸潤性膀胱がん膀胱壁の深部へ浸潤し筋層まで達するもの

上皮内がん上皮内に広がるがん。悪性度が高く浸潤がんへと変化する。

転移性がんがんが他の臓器に転移した状態

《膀胱がんの病期分類》

0期がんが粘膜(尿路上皮)に留まっている。

Ⅰ期がんが粘膜の下の組織まで広がっている。

Ⅱ期がんが筋層まで広がっている。

Ⅲ期がんが脂肪組織や隣の臓器まで広がっている。

Ⅳ期がんが骨盤壁または腹壁まで広がっている。もしくは、がんの広がりに関係なくリンパ節転移か遠隔転移のいずれか、あるいは両方がある。

《膀胱がんの治療法》

筋層非浸潤性膀胱がんでは、内視鏡的に腫瘍を切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)が行われ、筋層浸潤性膀胱がんの場合は、原則的には膀胱全摘手術の適応となります。この場合、尿路変更が必要となります。

転移がある場合や、術後再発、転移が出現してきた場合は、抗がん剤治療が中心となります。

【上部尿管がん(腎盂がん、尿管がん)について】

膀胱がんに比べて稀であり、全尿路上皮腫瘍の約5割とされています。上部尿路がんのうち、約25%が腎盂に発生し、約75%が尿管に発生します。

《上部尿管がん(腎盂がん、尿管がん)の病期分類》

0期粘膜上皮に留まっている。

Ⅰ期粘膜上皮の下の粘膜下結合組織まで広がっている。

Ⅱ期筋層に達している。

Ⅲ期筋層を越え、腎盂や尿管の周囲の脂肪組織や腎臓に広がっている。

Ⅳ期隣接する臓器や、腎臓を越えて周囲の脂肪組織に広がっている。または、がんの広がりに関係なくリンパ節転移か遠隔転移のいずれか、あるいは両方がある。

《上部尿管がん(腎盂がん、尿管がん)の治療法》

転移がない場合は、外科的手術が主体となります。がんの部分だけ切除し、腎や尿管を残すと、残された腎盂や尿管に発生することがあるため、患側の腎、尿管おとび膀胱の一部を摘出するのが一般的です。腎尿管全摘出術+膀胱部分切除術が標準的手術です。転移がある場合や、術後再発、転移が出現してきた場合は、抗がん剤治療が中心となります。

【尿道がんについて】

尿道に発生するがんは稀で、そのほとんどが50歳以降に発生すると言われています。男女のどちらも発生する可能性があり、尿路のがんで唯一、男性よりも女性に多く見られるがんとなります。一部の患者では特定のヒトパピローマウイルスが原因とみられていますが、それ以外の原因は不明です。

《尿道がんの治療法》

放射線療法、尿道摘出術、またはこれらの治療の治療法の併用が行われます。

【尿路上皮がんの薬物療法】

周囲組織への浸潤があり根治的切除が不可能、もしくは転移のある尿路上皮がん(腎盂、尿管がん、膀胱がん)に対しては、薬物療法が治療法の主体となります。

現在、尿路上皮がんに用いられている薬物療法には、化学療法と免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)があります。

《化学療法》

複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用化学療法が行われます。

標準治療は、GC療法(ゲムシタビン、シスプラチン)およびMVAC療法(シスプラチン、メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン)です。

《免疫チェックポイント阻害薬》

免疫チェックポイント阻害薬とは、がんが免疫を逃れて生き延びようとする仕組みをブロックして、人体が本来持っているがん免疫の作用を高めて、がんの進行を抑える治療です。2017年に、尿路上皮がんに対して保険適用になったペムブロズマブは、がん細胞が免疫細胞(T細胞)に対して自らを攻撃しないようにブレーキをかける際に利用されるPD-1という分子を抑える薬剤です。化学療法に抵抗性となった後に用いられます。

〈ICD分類〉

腎盂がん ⇒ C65

腎盂尿管移行<接合>部がん ⇒ C65

腎杯がん ⇒ C65

尿管がん ⇒ C66

膀胱三角部がん ⇒ C67.0

膀胱円蓋部がん ⇒ C67.1

膀胱側壁部がん ⇒ C67.2

膀胱前壁部がん ⇒ C67.3

膀胱後壁部がん ⇒ C67.4

膀胱頚部がん ⇒ C67.5

膀胱の尿管口がん ⇒ C67.6

尿膜管がん ⇒ C67.7

膀胱の境界部病巣 ⇒ C67.8

膀胱がんNOS ⇒ C67.9

尿道がん ⇒ C68.0

尿道傍腺がん ⇒ C68.1

腎尿路の境界部病巣 ⇒ C68.8

尿路がんNOS ⇒ C68.9

〈ICD9-CM〉

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)⇒ 57.49

尿膜管切除術 ⇒ 57.51

膀胱腫瘍摘出術 ⇒ 57.59

膀胱部分切除術 ⇒ 57.6

根治的膀胱摘除術 ⇒ 57.71

その他の膀胱全摘術 ⇒ 57.79

尿路変更術 ⇒ 56.51-79

膀胱部分切除術を伴う腎尿管摘除術 ⇒ 55.51

内視鏡下尿道腫瘍切除術 ⇒ 58.31

尿道腫瘍切除術 ⇒ 58.39