胃炎

 
やまねこ
結局、胃の病気はほとんどピロリ菌が悪さをしてるニャ

【胃炎とは?】

胃の粘膜は、胃酸という強い酸性を示す消化液にも耐えるものなので、本来は強いものです。ただ様々な原因によって、胃の粘膜に炎症が起きた状態になることがあります。これが胃炎です。

胃炎には食べすぎや飲み過ぎ、ストレス、タバコの吸い過ぎなどの生活習慣病やウイルス、ピロリ菌が一部に関与する急性胃炎と、原因の8割をピロリ菌が占め、そのほか薬の副作用などによって引き起こされる慢性胃炎があります。

【急性胃炎と慢性胃炎の違い】

急性胃炎の原因として最も多いのは暴飲暴食です。また精神的・肉体的なストレスや病原菌の感染、食べ物に対するアレルギーなども原因になります。急性胃炎は、原因を取り除いて適切な食事療法を行えば数日で治ります。

慢性胃炎は、そもそも分類すら定まっていない複雑なものです。多くの外因と内因が複雑に絡み合っている上に、加齢なども関与しています。

ただ慢性胃炎を診断するにあたって、ポイントが二つあります。

一つは「炎症の繰り返し」です。急性胃炎を起こす因子の多くが胃酸から保護する粘液の分泌を弱めてしまいます。なので、こうした因子が繰り返し作用する(例えば暴飲暴食を繰り返すなど)と、炎症が治りきらない間にまた炎症を起こして、次第にもとに戻らなくなっていってしまうのです。このように障害と修復が同時に見られる慢性胃炎は、結果として、井の上皮が腸の上皮に変わっていく腸上皮化生とともに、粘膜の萎縮に至ってしまいます。また慢性胃炎を診断するポイントのもう一つはヘリコバクターピロリ菌です。

ピロリ菌は粘膜を傷害し、胃の粘膜による防御システムを破壊してしまいます。ピロリ菌のたくさんいる状態では、慢性炎症に急性炎症の所見が加わっています。この状態は慢性活動性胃炎と呼ばれ、胃酸の中でピロリ菌が生き続けて持続的に障害を繰り返しています。

【胃炎の種類】

≪びらん性胃炎≫

ストレス、アルコールの過剰な摂取、クローン病、細菌ウイルス感染のほか、アスピリンや非ステロイド系抗炎症薬の使用によっても発症します。びらん性胃炎は、胃粘膜がびらん(ただれ)を起こして炎症している状態です。急性と慢性があります。

≪非びらん性胃炎≫

主にヘリコバクターピロリ菌感染によって発症します。非びらん性胃炎は、胃の粘膜が萎縮し、胃全体または一部に炎症が起こっている状態です。

≪急性ストレス性胃炎≫

突然の病気やケガなどによる血液量の低下、胃酸の分泌量の増加、胃の粘膜のバリア機能の低下などによって起こると言われています。急性ストレス性胃炎は、びらん性胃炎のうち一つに数えられています。

≪放射線性胃炎≫

上腹部に対する放射線の照射によって胃の粘膜に炎症を起こします。

≪胃切除後胃炎≫

胃の部分切除による胃の血液量の低下、大量の胆汁との接触によって、胃の粘膜に炎症を起こします。

≪表層性胃炎≫

慢性胃炎の初期を表層性胃炎といいます。粘膜は赤く充血しています。表層性胃炎が何年も続くと萎縮性胃炎に変わります。

≪萎縮性胃炎≫

胃の粘膜に炎症が起こることにより、胃炎や胃酸などを分泌する粘膜細胞が縮小し、委縮した状態のことをいいます。ヘリコバクターピロリ菌感染を原因として起こることが多く、無症状のことがほとんどですが、胃の運動機能が阻害されることもあります。放っておくと、腸上皮化生となって、やがて胃がんに進展することもあります。

≪肥厚性胃炎≫

胃の粘膜が薄くなって萎縮する萎縮性胃炎とは逆に、胃の粘膜が厚くなる胃炎です。胃炎やその中の胃酸の分泌が増加し、過酸症がみられることがあります。

≪腸上皮化生≫

ピロリ菌感染などにより胃粘膜上皮がびらんと再生を繰り返すうちに腸管粘膜上皮の形態に変化した状態です。環境への適応変化と考えられています。この状態から胃がんに進展する可能性が高いです。

≪慢性活動性胃炎と慢性非活動性胃炎≫

京都分類によって分類されたものです。ピロリ菌現感染胃粘膜を慢性活動性胃炎といい、ピロリ菌既感染胃粘膜のことを慢性非活動性胃炎といいます。

≪異所性胃粘膜≫

粘膜表層を覆う胃腺窩上皮と、その深部に主細胞と壁細胞を含む胃底腺細胞が揃っているもので先天的病変と考えられています。

〈ICD分類〉

急性出血性胃炎 ⇒ K29.0

急性びらん性胃炎 ⇒ K29.1

急性胃炎 ⇒ K29.1

アルコール性胃炎 ⇒ K29.2

表層性胃炎 ⇒ K29.3

萎縮性胃炎 ⇒ K29.4

慢性胃炎 ⇒ K29.5

びらん性胃炎 ⇒ K29.6

ヘリコバクターピロリ胃炎 ⇒ K29.6 B98.0

腸上皮化生 ⇒ K29.6

放射線胃炎 ⇒ K29.6

疣状胃炎 ⇒ K29.6

肥厚性胃炎 ⇒ K29.6

胃炎 ⇒ K29.7

十二指腸炎 ⇒ K29.8

胃十二指腸炎 ⇒ K29.9

異所性胃粘膜 ⇒ Q40.2