【化学熱傷】
腐食性物質とは、組織に損傷を与える化学物質です。具体的にはアルカリ液(排水パイプの塗料剥離剤の成分)、フェノール(消臭剤、殺菌剤、消毒薬の成分)、次亜塩素酸ナトリウム(消毒液や漂白剤の成分)、硫酸(トイレ用洗剤の成分や電池に使用されている酸)、塩酸(水泳プールの消毒剤やコンクリート用のクリーナーの成分)などで、工業用や化学兵器として使用されているものだけでなく、家庭用品に含まれていることがあります。
化学熱傷は、こうした腐食性物質に皮膚や眼が触れるか、腐食性物質を飲み込んでしまうことで起こります。
症状としては、通常はⅠ度熱傷に似た症状が見られます。まれに強い酸やアルカリによって全層(Ⅲ度)熱傷が起こり、皮膚のすべての層が損傷してしまいます。
【電撃傷】
感電、落雷、電気スパーク、溶接アーク光などによる電気的障害による組織損傷を電撃傷といいます。電気が体表面や体内を通ることによって起こる熱傷の一種です。症状は、皮膚の熱傷、内臓およびほかの軟部組織への損傷から、不整脈および呼吸停止まで多岐にわたります。重症例では感電したその場で、重症不整脈によって即死となることもあります。
一般の熱傷(やけど)と違い、電撃傷では、損傷がわずかでも不整脈を起こすことがあること、体表面の損傷の広さでは重症度を判定出来ないこと、時間が経つとともに局所の損傷が拡大すること、筋肉の損傷を伴うことも多いことが特徴といえます。
原因は配電盤工事などの労災事故がほとんどですが、米国では高電圧への偶発的な曝露により年間300人近くが死亡しています。
【気道熱傷】
鼻(口)から喉を通って肺まで続く空気の通り道を気道といいます。気道熱傷とは、火災などで高温となった空気(煙)を吸い込んで起こる、熱による気道粘膜の損傷です。
高温の煙は通常、咽頭のみに熱傷を起こします。例外が蒸気で、下気道(声門よりも下)にも熱傷が生じることがあります。
また住宅火災で生じる有毒化学物質の多くは、化学熱傷の原因となります。一酸化炭素やシアン化物など、燃焼による一部の有毒生成物は、細胞呼吸を全身性に傷害します。
なので、皮膚の熱傷(やけど)では、痛みやただれが大きな問題となりますが、気道に熱傷が起こった場合は、空気の出入り口を閉じてしまうために、気道の粘膜の腫れの方がより恐ろしい結果を引き起こすことがあります。
〈ICD分類〉
頭部および頸部の熱傷および腐食 ⇒ T20.0-7
体幹の熱傷および腐食 ⇒ T21.0-7
肩および上肢の熱傷および腐食、手首及び手を除く ⇒ T22.0-7
手首及び手の熱傷および腐食 ⇒ T23.0-7
股関節部及び下肢の熱傷及び腐食、足首および足を除く ⇒ T24.0-7
足首及び足の熱傷及び腐食 ⇒ T25.0-7
眼及び付属器に限局する熱傷及び腐食 ⇒ T26.0-9
気道の熱傷及び腐食 ⇒ T27.0-7
その他の内臓の熱傷及び腐食 ⇒ T28.0-9
多部位の熱傷及び腐食 ⇒ T29.0-7
熱傷及び腐食、部位不明 ⇒ T30.0-7
傷害された体表面積による熱傷分類 ⇒ T31.0-9
傷害された体表面積による腐食分類 ⇒ T32.0-9
電撃傷 ⇒ T75.4