【胃がんの原因】
多くの胃がんの原因となるのは、ヘリコバクターピロリ菌です。ヘリコバクターピロリ菌に感染すると胃粘膜に作用して慢性萎縮性胃炎になります。慢性萎縮性胃炎の状態が続くと胃の粘膜は腸の粘膜に似た機能や形態を示す腸上皮化生腺管に置き換えられていきます。
腸上皮化生腺管は前がん状態と考えられていて、慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生が多い粘膜ががん化するといわれています。
また胃がんの原因としては、そのほかに、ストレス、塩分の摂り過ぎ、喫煙などがあげられます。
【胃がんの深達度】
胃壁は内側から「固有粘膜層(M:T1a)」「粘膜下層(SM:T1b)」「固有筋層(MP:T2)」「漿膜下層(SS:T3)」「漿膜(SE:T3)」で構成されています。このうち日本では「固有粘膜層」から「粘膜下層」までの深さにとどまる胃がんを「早期胃がん」、「固有筋層」まで達したがんを「進行がん」と呼びます。
【早期胃がんの肉眼的分類】
表在型(0型)
隆起型(Ⅰ型)
表面隆起型(Ⅱa型)
表面平坦型(Ⅱb型)
表面陥凹型(Ⅱc型)
陥凹型(Ⅲ型)
【進行胃がんの肉眼的分類】
腫瘤型(1型):粘膜面から丸くがんが突き出しているタイプ。境界が明瞭な隆起を形成するタイプの胃がん。
潰瘍限局型(2型):腫瘍の中心に潰瘍のような形が出来、がんがそれを取り囲む堤防のような形を作り、正常部との境界がはっきりしているタイプ。
潰瘍浸潤型(3型):胃がんで最も多いタイプ。腫瘍の中心に潰瘍のような形が出来、がんは堤防のような形を作っているが正常部との境界がはっきりしないタイプ。
びまん浸潤型(4型):腫瘍部と正常部の境界が非常に不明瞭で周りの堤防がなく、浸潤範囲がよくわからないタイプ
分類不能(5型)
※1型から4型のうち最も頻度が高いのは3型です。また0型(表在型)のうち最も頻度が高いのはⅡc型(表面陥凹型)です。
※スキルス性胃がんは4型になります。
【胃がんの病理組織学的分類】
胃がんは粘膜上皮より発生する上皮性悪性腫瘍と上皮以外の組織より発生する非上皮性悪性腫瘍に分類されます。胃の粘膜は腺上皮によって構成されているので、組織学的には胃がんのほとんどは腺がんとなります。
上皮性悪性腫瘍の腺がんはさらに、乳頭腺がん、管状腺がん、低分化腺がん、印環細胞がん、粘液がんに分類されます。
このうち管状腺がんは、正常細胞に近いものから高分化腺がん、中分化腺がんに分けられます。高分化腺がんのうち乳頭状に突起して見えるものを乳頭状腺がんと呼びます。
低分化腺がんは、充実型と非充実型に分けられます。最も悪性度が高いがんと言われています。
粘液雁がんは粘液を大量に産生しがん組織中に粘液の溜まりを作るタイプのがんです。
扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、カルチノイド、内分泌細胞がんなども上皮性のがんです。非上皮性の腫瘍としては悪性リンパ腫や平滑筋肉腫、悪性GISTなどがあります。
《一般型》
・乳頭腺がん[Papillary adenocarcinoma](pap)
・管状腺がん[Tubular adenocarcinoma](tub)
1)高分化[well differentiated](tub1)
2)中分化[moderately differentiated](tub2)
・低分化腺がん[Poorly differentiated adenocarcinoma](por)
1)充実型[solid type](por1)
2)非充実型[non-solid type](por2)
・印環細胞がん[Signer-ring cell carcinoma](sig)
・粘液型[Mucinous adenocarcinoma](mus)
《特殊型》
・カルチノイド腫瘍[Carcinoid tumor]
・内分泌腫瘍[Endocrine carcinoma]
・リンパ球浸潤がん[Carcinoma with lymphoid stoma]
・肝様腺がん[Hepatoid adenocarcinoma]
・腺扁平上皮がん[Adenosquamous carcinoma]
・扁平上皮がん[Squamous cell carcinoma]
・未分化がん[Undifferentiated carcinoma]
【胃がんのグループ分類】
グループX:診断不適材料
グループ1:正常及び非腫瘍性
グループ2:非腫瘍か腫瘍の鑑別困難
グループ3:腺腫
グループ4:腺腫とがんの鑑別困難
グループ5:がん
【胃がんのTMN分類】
《T:深達度》
Tis:上皮内癌
T1:がんが胃の粘膜(M)または粘膜下層(SM)にとどまるもの
T2:がんが粘膜組織を超えているが、固有筋層(MP)または漿膜下組織(SS)にどどまるもの
T3:がんが漿膜(SE)に接しているかまたはこれを破って腹腔内に露出しているもの
T4:がんが直接、他の臓器に浸潤しているもの
《N:リンパ節転移の広がり》
N0:リンパ節転移がない
N1:胃に接したリンパ節のみに転移がある
N2:胃に流入する太い血管の根元にリンパ節転移がある
N3:さらに遠くのリンパ節に転移がある。
《M:遠隔転移》
M0:遠隔転移がない
M1:遠隔転移がある
【胃がんの病期分類】
胃がんの病期分類はTMN分類のTとMによって決定されます。
Ⅰ期:がんが粘膜、粘膜下層にとどまっている状態です。リンパ節の転移がないか、あっても近くのリンパ節のみにしか転移していない場合はⅠ期に分類します。またがんが筋層、漿膜下組織まで広がっていても、リンパ節に転移が認められない場合もⅠ期に分類します。粘膜下層にとどまるがんを早期胃がんと呼びます。
Ⅱ期:がんが漿膜に露出しているが、リンパ節転移がない場合はⅡ期に分類します。また中程度のリンパ節転移があるものの、がんの深さが胃壁内にとどまる場合もⅡ期と分類します。手術によって比較的治る可能性が高いです。
Ⅲ期:がんが漿膜に露出しており、同時にリンパ節転移を認める場合はⅢ期に分類します。またがんが胃壁内にとどまるものの、中程度のリンパ節転移を認める場合や、がんが他臓器浸潤している場合はⅢ期と分類します。まだ治る可能性が残されている病期です。
Ⅳ期:遠くの臓器やリンパ節にがんがあると診断された場合や、腹膜播種が認められた場合、Ⅳ期に分類します。治すことが難しい病期です。
〈ICD分類〉
胃上皮内がん ⇒ D00.2(壁深達度がTis)
胃がん ⇒ C16.0-9
食道胃接合部がん ⇒ C16.0