【心内膜炎とは?】
心内膜炎とは、感染症やがんなどを原因として発症する疾患です。心臓の内面を裏打ちする心内膜と呼ばれる部位に、疣贅(ゆうぜい)と呼ばれる疣のような塊が形成されます。特に心臓の弁に生じることが多く、ときに大動脈弁不全症や弁膜症の原因となります。また疣贅が剥がれ落ち、血管に詰まってしまうことから脳梗塞の原因となることもあります。
【感染性心内膜炎と非感染性心内膜炎】
心内膜炎は、発症原因により感染症心内膜炎(IE)と非感染性心内膜炎に分けられます。
《感染性心内膜炎(IE)》
手術や抜歯、ケガなどをキッカケにして血液の中に病原体が入ったことで発症する病気です。危険因子は以下のものになります
・違法薬物を注射で使用している人
・免疫機能が低下している人
・人工弁、ペースメーカーまたは植え込み型除細動器(ICD)を使用している人
・ファロー四徴症などの先天性心疾患を患っている人
・リウマチ熱後の弁膜症がある人
・加齢に伴って心臓弁の変性(僧帽弁逸脱や大動脈弁へのカルシウムの沈着など)を起こしている人
《非感染性心内膜炎》
病原体以外の原因で生じた心内膜炎のことをいいます。特に原因として一番挙げられるのはがんで、中でも肺がんや膵臓がん、胃がんが多いと言われています。がん以外の原因としては、SLE(全身性エリトマトーデス)や抗リン脂質抗体症候群、リウマチ熱、HIV、放射線治療などが挙げられます。また非感染性心内膜炎でも、線維性の血栓に微生物が付着して内部で増殖することがあるため、ときに感染性心内膜炎の発生に繋がります。
【急性感染性心内膜炎と亜急性感染性心内膜炎】
感染性心内膜炎は、発症期間によって急性感染性心内膜炎と亜急性感染性心内膜炎に分類されます。
急性感染性心内膜炎:突然発症して数日で生命を脅かすようになります。また置換手術後の心臓弁(人工弁)で起こる急性感染性心内膜炎を人工弁心内膜炎といいます。
亜急性感染性心内膜炎(亜急性細菌性心内膜炎):数週間から数カ月かけて少しずつ進行しますが、やはり声明を脅かす可能性があります。
【治療】
感染性心内膜炎:抗生物質による治療になります。また疣贅に対しては抗生物質の効果が出にくいことから治療期間は数週間ほどに渡ります。血管閉塞の危険性が高いと診断された場合は、外科手術によって疣贅を摘出し、人工弁への置き換えを行うことがあります。
非感染性心内膜炎:疣贅を形成した原因に対する根本治療となります。
〈ICD分類〉
急性感染性心内膜炎 ⇒ I33.0
亜急性感染性心内膜炎 ⇒ I33.0
感染性心内膜炎NOS ⇒ I33.9
心内膜炎NOS ⇒ I33.9
人工弁心内膜炎 ⇒ T82.6