一過性脳虚血発作(TIA)

 
やまねこ
一過性脳虚血発作(TIA)とは、脳梗塞の前駆症状だニャ

【一過性脳虚血発作(TIA)とは?】

虚血とは、血液の流れが不十分で何らかの神経症状が出現した状態のことです。

一過性脳虚血発作(TIA)とは、動脈硬化などにより、脳の血管の一部が狭窄したり、詰まったりすることで一時的に脳が虚血状態となって、神経症状が起きたものの、症状が回復した発作のことをいいます。

以前は24時間以内に症状が消えるというのが一過性脳虚血発作(TIA)の定義でしたが、最近では24時間以内に症状が消えても、MRIによって脳梗塞が見つかることが増えてきているために、持続時間は問われていません。

現在では、虚血によって一時的に神経症状が出ているものを一過性脳虚血発作(TIA)と定義し、急性梗塞を伴うものは脳梗塞と診断されているそうです。

【一過性脳虚血発作(TIA)がなぜ問題とされているのか?】

一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の前駆症状と考えられています。

一過性脳虚血発作(TIA)を起こした人の10-15%が三カ月以内に脳梗塞になり、その半数は二日以内に発症していることが、いくつかの臨床研究の結果わかってきました。

一過性脳虚血発作(TIA)が疑われた場合は、脳梗塞の寸前という認識になるので、脳梗塞の発症予防という観点からも、一過性脳虚血発作(TIA)の発見と治療は重要になっています。

【一過性脳虚血発作(TIA)の原因と病態】

一過性脳虚血発作(TIA)が生じる原因は、発生機序による病態によって様々です。

《アテローム血栓性(塞栓性)TIA》

TIAの原因としては最も多いタイプです。頸動脈、頭蓋内主幹動脈、大動脈弓のアテローム硬化性病変から、血栓(血小板血栓)が血流に乗り、末梢血管に詰まることで神経脱落症状を引き起こし、血栓が溶けることで症状が消失します。血栓が頭蓋内脳血管に流れてTIA後に脳梗塞を発症させることもあります。

《血行力学性TIA》

もともと脳主幹動脈に高度の閉塞や狭窄があると、一時的な血圧低下などが原因で脳血流が低下し、脳虚血が生じることがあります。血圧が回復することで症状も治るものが、血行力学TIAと呼ばれます。

《心原性塞栓性TIA》

心房細動や弁膜症などが原因で心臓内に血栓が生じ、それが脳血管に詰まった場合のことを言います。これがそのまま脳梗塞に至った場合は、心原性塞栓性脳梗塞となりますが、血栓が小さくすぐに溶けた場合には、心原性塞栓性TIAとなります。

《ラクナTIA》

日本人には比較的に多いタイプだと言われています。ラクナ梗塞が大脳基底核の一過性虚血を生じさせ、TIAに至ることがあります。

【一過性脳虚血発作(TIA)の重症度】

一過性脳虚血発作(TIA)の脳梗塞発症リスクを判断するためにABCD²スコアが使われます。

AAge(年齢)>60歳(1点)

BBlood pressure(血圧)>140/90mmHg(1点)

CClinical feature(臨床像)>半身麻痺(2点)、麻痺のない言語障害(1点)

DDiabetes(糖尿病)(1点)

DDuration of symptoms(持続時間)(10-59分は1点、60分以上は2点)

ABCD²スコアが3点以上の場合には、入院治療が必要だとされています。

【一過性脳虚血発作(TIA)の症状】

一過性脳虚血発作(TIA)の症状は、脳内のどの血管が閉塞したかによって異なります。

脳内の血管は大きく分けて内頸動脈系椎骨脳底動脈系があります。内頚動脈と椎骨動脈は首にある太い血管で、これらが頭蓋内に入り、脳内で細かく枝分かれをして末梢血管になります。

《内頸動脈系》

麻痺やしびれ、脱力などの神経障害が起こります。また、片目の一時的な視力障害(一過性黒内障)が起きたり、言葉が出てきづらくなったりすることがあります。

頸動脈症候群

一過性黒内障

《椎骨脳底動脈系》

めまいや歩行障害、言葉が出てくるのにうまく話せない、嚥下障害などが特徴的な症状となります。これらの症状は、椎骨脳底動脈系が栄養する小脳や延髄の機能障害による症状です。

椎骨脳底動脈症候群(椎骨脳底動脈循環不全)

【治療】

基本的には内科治療となります。血栓性の可能性が高い場合には、アスピリンなどの抗血小板薬が処方されます。心原性が疑われる場合には、ワーファリンなどの抗凝固薬が投与されます。

また頸動脈に高度狭窄がある場合には、頸動脈内剥離術(CEA頸動脈ステント留置術(CAS)の適応となります。

〈ICD分類〉

椎骨脳底動脈症候群(椎骨脳底動脈循環不全)⇒ G45.0

頸動脈症候群 ⇒ G45.1

一過性黒内障 ⇒ G45.3

一過性脳虚血発作NOS ⇒ G45.9

〈ICD9-CM〉

頸動脈内膜剥離術(CEA)⇒ 38.12

頸動脈ステント留置術(CAS)⇒ 39.90