【単純ヘルペスウイルス感染症とは？】
単純ヘルペスウイルス（HSV）感染症とは、単純ヘルペスウイルス１型または２型による感染症の総称です。皮膚や粘膜に水疱性病変を形成する特徴があります。１型は主に、顏、口唇、眼、皮膚部位、中枢神経など上半身に発病します。２型は外陰部や尿道に病変がおこります。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると神経節と呼ばれる部分に潜伏し、治療によって完全に除去されることはありません。また潜伏感染が持続した結果、再活性化による再発という特徴を持ち、年齢、免疫機能の状態に応じてヘルペス脳炎、歯肉口内炎、口唇ヘルペス、性器ヘルペスなどを起こしていきます。
【原因】
《単純ヘルペスウイルス１型の原因》
ウイルスを排出している人とのキスや同じ食器での食べ回しなどが原因で感染します。単純ヘルペスウイルス１型は、主に口唇などの上半身に出やすく、禁煙の若者の抗体保有率は45％程度です。
《単純ヘルペスウイルス２型の原因》
性交などの皮膚や粘膜、体液との接触で感染します。単純ヘルペスウイルス２型による性器ヘルペスは１型によるものよりも再発が高頻度に見られます。
【様々な単純ヘルペスウイルス感染症】
《口唇ヘルペス》
主に単純ヘルペスウイルス１型の感染によって起こります。唇やその周囲に小さな水ぶくれが出来る病気です。直接的な接触の他にウイルスのついたタオルや食器などを介しても感染することがあるので、家族間での感染が多いです。大人に見られる口唇ヘルペスのほとんどは再発で、年に１～２回程度再発する場合が多いようです。
《性器ヘルペス》
主に単純ヘルペスウイルス２型の感染によって起こります。性器やお尻の周辺に水ぶくれが出来る病気です。男性よりも女性が２倍発症することが多いとされています。単純ヘルペスウイルス２型は１型よりも再発の頻度が高いとされています。一ヶ月に何回も再発する人もいれば、年に１回くらいの人もいます。
《ヘルペス性歯肉口内炎》
乳幼児が単純ヘルペスウイルス１型に初感染した際に最も多く見られる症状です。好発年齢は１～５歳です。口の中に水疱やびらんが多発し、熱が出たりリンパ節が腫れたりします。
《ヘルペス性ひょう疽》
ほとんどが単純ヘルペスウイルス１型の感染によるものです。ヘルペス性歯肉口内炎から指しゃぶりにより起こることが多いです。手指に腫脹を伴った小水疱がいくつもあらわれ、ときには癒合し大きな水疱を形成します。
《新生児ヘルペス感染症（先天性ヘルペスウイルス感染症）》
出産時に産道を通った際に、母親から単純ヘルペスウイルス２型をうつされることで発症することが主です。局在型（表在型）、全身型、中枢神経型の３型に分類されます。生後数日高熱や痙攣、呼吸不全を起こして死亡することもあります。また脳や脊髄に感染してヘルペス脳炎を起こすこともあります。
《単純ヘルペス脳炎》
脳や脊髄への単純ヘルペスウイルスの感染や、免疫力低下による再活性化によって引き起こされる病気です。重症化することが多く、発症すると死亡することもあります。寝たきりや認知機能障害、記憶障害などの後遺症が残ることも多いです。50～60代が多くみられる一方で、新生児や小児がかかることもあります。日本では年間100万人につき約3.5人が発症します。
《ヘルペス性湿疹（カポジ水痘様発疹症》
湿疹またはアトピー性皮膚炎などが出現しているところに単純ヘルペスウイルスが初感染して起こります。好発部は頭、顔面、上半身で、好発年齢は0～５歳です。全身型と限局型があります。
【治療】
抗ウイルス薬の内服や点滴が中心です。特に初感染の場合は、出来る限り早く治療を始めることが大切です。軽症の口唇ヘルペスの場合は外用薬を用いることもあります。
〈ＩＣＤ分類〉
カポジ水痘様発疹症 ⇒ Ｂ00.0
ヘルペスウイルス外耳炎 ⇒ Ｂ00.1† Ｈ62.1＊
口唇ヘルペス ⇒ Ｂ00.1
ヘルペスウイルス性歯肉口内炎 ⇒ Ｂ00.2† Ｋ05.1＊
ヘルペス口内炎 ⇒ Ｂ00.2† Ｋ12.1＊
ヘルペス脳炎 ⇒ Ｂ00.4† Ｇ05.1＊
ヘルペスウイルス性角結膜炎 ⇒ Ｂ00.5† Ｈ19.1＊
ヘルペスウイルス性角膜炎 ⇒ Ｂ00.5† Ｈ19.1＊
ヘルペスウイルス前部ぶどう膜炎 ⇒ Ｂ00.5† Ｈ22.0＊
ヘルペスウイルス性虹彩炎 ⇒ Ｂ00.5† Ｈ22.0＊
ヘルペスウイルス性虹彩毛様体炎 ⇒ Ｂ00.5† Ｈ22.0＊
ヘルペスウイルス性網脈絡膜炎 ⇒ Ｂ00.5† Ｈ32.0＊
ヘルペスウイルス性ひょう疽 ⇒ Ｂ00.8† Ｌ98.8＊
ヘルペスウイルス性肝炎 ⇒ Ｂ00.8† Ｋ77.0＊
単純ヘルペスＮＯＳ ⇒ Ｂ00.9
先天性ヘルペスウイルス感染症 ⇒ P35.2
ヘルペスウイルス性外陰膣炎 ⇒ A60.0† N77.1＊
ヘルペスウイルス性膣炎 ⇒ A60.0† N77.1＊
陰のうヘルペス ⇒ A60.0† N51.8＊
性器ヘルペスNOS ⇒ A60.0
直腸ヘルペス ⇒ A60.1† K93.8＊
肛門ヘルペス ⇒ A60.1
