熱傷(やけど)の分類

 
やまねこ
熱傷(やけど)の重症度は、深度と面積によって決められるニャ

【熱傷の重症度】

皮膚は上から「表皮」「真皮」「皮下脂肪組織」に分かれています。この皮膚のどこまでを損傷したかによって、熱傷(やけど)の症状や治療の緊急性、治療法、後遺症が変わっています。そのために、熱傷(やけど)を負った際には、熱傷(やけど)の深度を判断することがとても重要になります。

この皮膚損傷を受けた深度(深さ)とその面積によって、熱傷(やけど)の重症度は主に判定されます。

《熱傷の深さ》

日本熱傷学会では、熱傷による皮膚損傷の深さを三つに分類しています。

[Ⅰ度熱傷]

皮膚の最も上側である表皮だけが損傷を受けた状態です。皮膚の発赤と浮腫(むくみ)が生じて強い痛みを伴いますが、通常2~3日で自然に治癒し、瘢痕(傷跡)などの後遺症は残りません。

[Ⅱ度熱傷]

表皮に加え、真皮にまで障害が及んでいる状態です。水疱(水ぶくれ)が出来るのが特徴です。Ⅱ度熱傷は「浅達性」「深達性」に分けられます。

[浅達性Ⅱ度熱傷]

真皮の浅い部分まで障害が及ぶ熱傷(やけど)です。通常1~2週間程度で治癒します。治癒した痕も、色素沈着や色素脱色が残る程度でおさまることがほとんどです。

[深達性Ⅱ度熱傷]

真皮の深い部分まで障害が及び、皮膚付属器も損傷を受ける熱傷(やけど)です。治癒まで3~4週間かかり、ケロイドや肥厚性瘢痕などの後遺症を残す可能性があります。また傷跡にひきつれや拘縮を起こす場合もあります。

[Ⅲ度]

真皮すべて、さらに皮下組織まで損傷が及んでいる状態です。水疱は形成されず、受傷部位は羊皮紙様を呈します。知覚神経まで侵されているので痛みはほとんどありません。通常、治癒には1ヶ月以上かかり、瘢痕が残ります。また受傷範囲が掌以上の面積の場合は、皮膚移植術が必要となります。

※皮膚には様々な付属機関が存在します。そしてその中の痛み、感触、温度などを感じ取る感覚受容器(知覚神経の終末部分)は皮膚の表面、すなわち表皮に近い部分に存在します。したがって、一般的に深い熱傷(やけど)よりも浅い熱傷(やけど)の方が痛みを感じます。

《熱傷面積》

熱傷面積を出す際、一般的によく使われる測定法に、①9の法則②5の法則③手掌法④Lund&Browderの法則があります。

[9の法則]

陰部を除く身体の区画をすべて9の倍数で評価する方法です。大人の熱傷面積を評価する時に使われます。昔から顔、頭を9%(顔面だけ、もしくは頭部だけの場合は4.5%)、上肢を9%、下肢を18%、体幹を18%とし、陰部を1%と定義します。

[5の法則]

身体の区画をすべて5の倍数で評価する方法です。幼児や小児の熱傷面積を評価する時に使われます。首から顔、頭を幼児では20、小児では15、成人では5としているのが特徴です。

[手掌法]

比較的熱傷面積が狭い時や、狭い範囲の熱傷が複数個所に存在している時に使います。患者の手掌部(手首から指全体)を概ね体表面積の1%として算定する方法です。基本的には成人で使います。

[Lund&Browderの法則]

9の法則や5の法則よりも身体の部分をより細かく区分し、かつ年齢に応じて評価する方法です。より正確に算定出来ますが、算定に時間がかかります。

【分類

[軽症]

Ⅱ度の熱傷が15%未満の面積、またはⅢ度の熱傷が2%未満の面積 ⇒ 初期は外来で治療可能。

[中等症]

Ⅱ度の熱傷が15~30%の面積、またはⅢ度の熱傷が2~10%の面積(顔、手、会陰を含まない)⇒ 一般病院での入院治療

[重症]

Ⅱ度の熱傷が30%以上、またはⅢ度の熱傷が10%以上/特殊部位(顔、手、会陰など)の熱傷/気道熱傷、化学損傷、電撃症など ⇒ 救急センターでの集中治療

〈ICD分類〉

頭部および頸部の熱傷および腐食 ⇒ T20.0-7

体幹の熱傷および腐食 ⇒ T21.0-7

肩および上肢の熱傷および腐食、手首および手を除く ⇒ T22.0-7

手首および手の熱傷および腐食 ⇒ T23.0-7

股関節部および下肢の熱傷および腐食、足首および足を除く ⇒ T24.0-7

足首および足の熱傷および腐食 ⇒ T25.0-7

眼および付属器に限局する熱傷および腐食 ⇒ T26.0-9

気道の熱傷および腐食 ⇒ T27.0-7

その他の内臓の熱傷および腐食 ⇒ T28.0-9

多部位の熱傷および腐食 ⇒ T29.0-7

熱傷および腐食、部位不明 ⇒ T30.0-7

傷害された体表面積による熱傷分類 ⇒ T31.0-9

傷害された体表面積による腐食分類 ⇒ T32.0-9

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