【胚細胞性腫瘍とは?】
胚細胞性腫瘍とは、性腺以外から発生する腫瘍の一つです。若い男性に発生することが多く、全縦隔腫瘍の約5%を占めています。奇形腫に代表される、臨床的に良性である腫瘍と、精上皮腫(セミノーマ)や非セミノーマに代表される悪性腫瘍があります。
《奇形腫》
良性の腫瘍となります。成熟奇形腫と未熟奇形腫に分類されます。嚢胞状になっていることも多く、自己消化等で穿孔を起こし、発熱や内容物の喀出など自覚症状を起こすことがあります。
《セミノーマ》
予後が良好です。化学療法や放射線治療の感受性が高いです。
《非セミノーマ》
胎児性がん、がん奇形腫、卵黄嚢がん、絨毛がんなどがあります。
化学療法を行って縮小させたのちに、切除が可能であれば、手術療法が選択されます。
【リンパ系腫瘍】
全縦隔腫瘍の約4%程度を占めます。
《組織分類(WHO)》
・ホジキンリンパ腫
・B及びT前駆細胞腫瘍
・成熟B細胞腫瘍(多発性骨髄腫、MALTリンパ腫等含む)
・成熟T及びNK細胞腫瘍
※MALTリンパ腫は手術療法が適応されることがあります。またキャストルマン病では、腫瘍が限局の場合は手術適応になります。
【神経原性腫瘍】
後縦隔に発生する代表的な腫瘍で、全縦隔腫瘍の約12%程度を占めています。神経節細胞由来の腫瘍と、神経線維由来の腫瘍に分類されます。
良性:神経節細胞腫、褐色細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫など
悪性:悪性神経鞘腫、悪性神経線維腫など
【先天性嚢胞】
全縦隔の20%程度を占める袋状の病変です。まれにがんの発生母地になることがあります。発生部位によって、気管支原性嚢胞、胸腺嚢胞、食道嚢胞、心膜嚢胞、胸管嚢胞などと呼ばれます。
【甲状腺腫】
上縦隔腫瘍の代表的な腫瘍です。頸部に存在する甲状腺が発生母地ですが、腫瘍の一部、またはすべてが縦隔に存在することもあります。全縦隔腫瘍の約2%を占めます。
〈ICD分類〉
縦隔胚細胞性腫瘍 ⇒ C38.3
ホジキンリンパ腫 ⇒ C81.9
縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫 ⇒ C85.2
縦隔悪性リンパ腫 ⇒ C85.9
MALTリンパ腫 ⇒ C88.4
成熟T及びNK細胞腫瘍 ⇒ C84.9
神経節細胞腫 ⇒ D36.1
褐色細胞腫 ⇒ D35.0
神経線維腫 ⇒ D36.1
神経鞘腫 ⇒ D36.1
悪性神経鞘腫 ⇒ C47.3
悪性神経線維腫 ⇒ C47.3