【流産とは?】
流産とは、妊娠中に何らかの異常があり、22週未満で妊娠が終了してしまうことをいいます。人工妊娠中絶などで医学的に妊娠を終了させる流産を人工流産と呼ぶのに対し、自然に発生する流産を自然流産と呼びます。
自然流産は全妊娠の10~15%で起こると言われており、母体の年齢が上がるとともに頻度が高くなります。また自然流産の約80%は妊娠12週未満で起こります。
【原因】
自然流産の原因は、胎児側の原因と母体側の原因、両親の原因に分けられます。
《胎児側の原因》
染色体異常や遺伝などで受精の段階から流産する可能性が極めて高くなります。初期の自然流産はほとんど胎児側の原因によるものです。
《母体側の原因》
妊娠を継続するためのホルモンが正常に働かない、黄体機能不全が原因で流産となることがあります。また母体に高リン脂質抗体症候群、高プロラクチン血症、血液凝固系異常、甲状腺機能異常などの病気がある場合も習慣流産となることがあります。また何らかの感染症によって子宮にも炎症が及ぶと、子宮収縮が促されて流産に至ることがあります。
《両親の原因》
夫婦どちらかに潜在的な染色体異常がある場合は、胎児も染色体異常のことが多く、自然流産の原因となりえます。また母体に免疫系の異常があり、夫由来の胎児成分を異物と認識してしまうことで体外に排出する力が働いてしまうこともあります。
【分類】
《原因による分類》
人工流産:いわゆる人工妊娠中絶のこと。母体保護の目的で母体保護法指定医によって行われる手術によってなされる流産です。
自然流産:人工妊娠中絶以外の、自然に起きるすべての流産のこと。手術の有無は関係ありません。
化学(的)流産:尿や血液を用いた妊娠反応は出たものの、超音波検査で妊娠が確認出来る前、つまり非常に早期に流産してしまった状態のことをいいます。
《症状による分類》
稽留(けいりゅう)流産:胎児は死亡しているが、まだ出血・腹痛などの症状がない場合のことをいいます。自覚症状がないため医療機関の診察で初めて確認されます。治療としては、子宮内容除去術を行う場合と、経過を見て自然排出を期待する場合があります。
進行流産:出血が始まり、子宮内容物が外に出てきている状態のことをいいます。いわゆる「流産」の状態です。「完全流産」と「不全流産」に分けられます。
《進行具合による分類》
完全流産:子宮内容物がすべて自然に出てしまった状態の流産です。出血・腹痛などの症状は治まっていることが多く、経過観察で対処出来ることが多い病態です。
不全流産:子宮内容の排出が始まっているが、まだ一部が子宮内に残存している状態の流産です。出血・腹痛が続いていることが多く、子宮内容除去術を行うことが多いです。
《回数による分類》
反復流産:流産の繰り返しが2回以上の場合を「反復流産」と呼びます。頻度は2~5%と言われています。
習慣流産:流産を3回以上繰り返した場合を特に「習慣流産」といいます。1%程度の頻度といわれています。
《その他の名称》
感染流産:細菌などによる感染を伴った流産のことをいいます。母体死亡のリスクが上昇するため、慎重な管理が必要となります。
【切迫流産とは?】
胎児が子宮内に残っており、流産の一歩手前である状態を「切迫流産」といいます。「自然流産」は妊娠継続不可能ですが、「切迫流産」は妊娠継続出来る可能性があります。
妊娠12週までの切迫流産に有効な薬剤はないと考えられており、ほとんど安静など経過観察で対処されます。
【治療】
子宮内容物を取り除くことが第一となります。稽留流産や不完全流産では、子宮内容除去術を行います。進行流産でも稽留流産でも、経過中に感染徴候が認められるときは抗生剤投与などを行います。
完全流産の場合には、子宮内容除去術は行わずに経過を見ることが多いです。
習慣流産の場合は、子宮内容物を取り除き、次の妊娠に備える治療や妊娠継続を促す治療も行います。
〈ICD分類〉
稽留流産 ⇒ O02.1
自然流産 ⇒ O03.0-7
医学的人工流産 ⇒ O04.0-7
その他の流産 ⇒ O05.0-7
流産NOS ⇒ O06.0-7
人工流産NOS ⇒ O06.0-7
不成功に終わった人工流産 ⇒ O07.0-9
切迫流産 ⇒ O20.0
〈ICD9-CM〉
妊娠中絶を目的とした子宮頸管拡張を伴う子宮内容除去術 ⇒ 69.01
分娩または流産後に行う子宮頸管拡張を伴う子宮内容除去術 ⇒ 69.02
妊娠中絶を目的とした吸引掻爬術 ⇒ 69.51
分娩または流産後に行う吸引掻爬術 ⇒ 69.52