【膣炎とは?】
女性の生殖器は外側から外陰、膣、付属器(卵巣と卵管)とつながっています。この経路のうち、膣に炎症が起きている状態を膣炎と呼びます。
《膣の自浄作用》
膣の中には主に6種類の細菌が適度なバランスを保って住んでおり、その中で乳酸菌が主要な力を持っています。この乳酸菌によって膣の中の粘膜から放出されたグリコーゲンが分解され、乳酸が作られます。この乳酸が膣の中を酸性に保つことによって、酸性の環境に弱い病原体は膣内に入りづらく、中で増えることも難しくなっているのです。膣炎はこの自浄作用が様々な理由により弱くなったときに起こります。
【原因】
通常、性成熟期の女性は膣の自浄作用に問題がなく、感染にも強いはずです。ただ性的拙速による感染によって膣炎が発症することがあります。具体的な感染病原体としては、淋病、クラミジア、カンジダ、トリコモナス、単純ヘルペスウイルスなどです。
また自浄作用が弱いことで膣炎が起こることがあります。小児や高齢の女性などは乳酸菌が少ないため、膣の中はほぼ中性となっており、極めて感染に弱い状態になっています。
また自浄作用があっても、生理用品の刺激などで膣の中の環境が変化し、正常な菌のバランスが崩れて病原体が異常に増えてしまうことがあります。
【膣炎の種類】
細菌性膣炎:大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの一般細菌の感染によって起こります。
カンジダ膣炎:カンジダ菌(カビの一種)が原因となり発症します。外陰部の炎症を伴い、かゆみがあります。
トリコモナス膣炎:トリコモナス原虫が原因で発症します。性交だけでなく、お風呂やサウナなどでもうつることがあります。
萎縮性膣炎:以前は老人性膣炎と呼ばれ、卵巣にホルモンの欠落によって起こります。
性感染症(STD):性交によって感染する病気全般のことを言います。クラミジア感染症、淋病、性器ヘルペス、トリコモナス膣炎、エイズなど。
【治療】
それぞれの病原体に応じた治療を行います。具体的には膣の中に錠剤を入れる治療、抗菌薬(抗生剤)の内服や点滴の治療が必要になる場合があります。
〈ICD分類〉
急性膣炎 ⇒ N76.0
亜急性及び慢性膣炎 ⇒ N76.1
急性外陰炎 ⇒ N76.2
亜急性及び慢性膣炎 ⇒ N76.3
外陰膿瘍 ⇒ N76.4
膣潰瘍 ⇒ N76.5
外陰潰瘍 ⇒ N76.6
膣及び外陰のその他の明示された炎症 ⇒ N76.8