【陰嚢水腫とは?】
陰嚢水腫とは精巣の周囲に液体が溜まって陰嚢(いわゆるたまのふくろ)が膨らんだ状態のことをいいます。精巣水瘤とも呼ばれます。主に新生児に見られることが多いのですが、1歳になるまでに自然治癒することも少なくありません。また新生児期にかかわらず、ケガや炎症などをきっかけとしてどの年齢層でも生じる可能性があります。
乳幼児の陰嚢水腫は、鼠経ヘルニアが原因であることが多く、腹腔内と交通し、内部に水が貯留している状態です。また大人の陰嚢水腫は、精巣(睾丸)を含む膜(漿膜)の中に液体が膨らんだ状態になる病気です。大人の陰嚢水腫も、原因が鼠経ヘルニアである場合がありますが、その多くは不明です。
【陰嚢水腫の原因】
新生児期:おなかの中で形成された精巣は、週数が進むにつれて徐々に精巣の中に移動します。この過程において、精巣は「精巣漿膜」と呼ばれる薄皮で包まれることになります。通常は精巣と精巣漿膜は密着しているのですが、密着が上手くいかずに両者の間に水が入り込むことがあります。これが陰嚢水腫です。
成人期:成人を含むより年長の陰嚢水腫は基本的に炎症やケガなどが原因で生じます。炎症は精巣や精巣上体と呼ばれる部位に感染症(特に性感染症)をきっかけに生じることがあり、結果として陰嚢水腫が生じます。
【陰嚢水腫の治療法】
新生児期の陰嚢水腫はそのまま経過観察をします。しかし水腫が増大している場合などには手術を検討します。また成人においても、自然消失をすることがありますが、乳児の場合と同じく、増大傾向にある場合などには手術が検討されます。
【精索水腫とは?】
胎児期に精巣が陰嚢内に降りてくる時期に、隣り合っている腹膜も内鼠経輪から精巣を含む形で鞘状突起として出てきます。精索水瘤とは、精索を含む腹膜鞘状突起という膜の中に腹膜浸出液が溜まった状態のことを言います。精索部の鞘状突起に液の貯留があれば精索水腫で、液が精液に留まると陰嚢水腫と呼ばれます。なお、精索水瘤は、精索水腫とも呼ばれます。
【精索水瘤の原因】
先天性の場合は、腹膜鞘状突起の閉鎖不全のような先天的な構造異常を伴うことが多いといわれています。一方で後天性のものは、精索近傍、もしくは精索の感染などによる炎症に伴って発生することが多いと言われています。
【精索水瘤の治療】
1歳未満の乳児の場合は自然治癒の可能性があるために経過観察となります。1歳を過ぎても症状が改善しない場合や、成人の場合は、手術療法が勧められます。
〈ICD分類〉
被嚢精巣水瘤(陰嚢水腫)⇒ N43.0
感染性精巣水瘤(陰嚢水腫)⇒ N43.1
交通性精巣水瘤(陰嚢水腫)⇒ N43.2
精巣水瘤(陰嚢水腫)NOS ⇒ N43.3
精索水瘤(精索水腫)NOS ⇒ N43.3
精液瘤 ⇒ N43.4
先天性精索水瘤(陰嚢水腫)⇒ P83.5
〈ICD9-CM〉
陰嚢水腫手術 ⇒ 61.2
精索水瘤手術 ⇒ 63.3
精液瘤摘除 ⇒ 63.2