【肺がんとは?】
口から入った空気は、気管を通り、左右の肺に分かれた後で、気管支で枝分かれをします。そして、最後には肺胞に辿り着きます。肺胞の周りでは毛細血管が取り巻かれており、そこで酸素と二酸化炭素のガス交換が行われています。肺がんとは、肺の気管、気管支、肺胞の一部が何らかの原因でがん化したものです。進行するにしたがって、組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れに乗って広がっていきます。
【肺の構造】
肺は左葉と右葉の二つに分かれており、さらに細かく肺区域に分かれています。各区域はSegment(区域の英語表記)の頭文字Sをとり、S1、S6などと表記されます。
《右葉》
右上葉:S1、S2、S3
右中葉:S4、S5
右下葉:S6、S7、S8、S9、S10
《左葉》
左上葉:S1+S2、S3、S4、S5
左下葉:S6、S8、S9、S10
※右肺が3葉、左肺が2葉になっています。肺区域は、右が10個、左が8個になっています。
【肺がんの組織分類】
《非小細胞肺がん》
腺がん:肺の奥の方に発生することがほとんどです。気管支や肺胞などの表面を覆う細胞に似た形や性質を持ちます。女性の罹患が多いです。
扁平上皮がん:肺の入り口近くに発生することが多いです。皮膚の表面のように角質を作る性質をもったがんです。罹患者のほとんどが喫煙者になります。
大細胞がん:肺の奥の方に発生し、増殖が速いことが多いです。大きな細胞からなるがんで、腺癌や扁平上皮がんなど特徴がみられない場合に診断されます。
《小細胞肺がん》
小細胞がん:比較的小さな細胞が密集して広がっています。肺の入り口近くに発生し、罹患者のほとんどが喫煙者になります。転移がしやすいがんです。
※肺がんの約60%を占めるのが腺がんです。次に扁平上皮がんが多く見られます。大細胞がんや小細胞がんは比較的発症頻度が低いがんになります。
【肺がんのステージ(病期)分類】
肺がんのステージ(病期)分類は、TNM分類の3つの因子を組み合わせて決定します。病期分類は細かく13段階に分かれていますが、0期に近いほどがんは小さくとどまっており、Ⅳ期に近いほどがんは広がっているとみなします。
《Ⅰ期》
がんが肺の中にとどまり、リンパ節への転移はない。
ⅠA期:腫瘍の大きさが3㎝以下
ⅠB期:腫瘍の大きさが3~4㎝以下
《Ⅱ期》
リンパ節転移はないが、肺の中のがんが大きい、または、がんと同じ側の肺門リンパ節に転移している。
ⅡA期:腫瘍の大きさが4㎝以上5㎝以下
ⅡB期:腫瘍の大きさが5㎝以上7㎝以下、または腫瘍の大きさが5センチ以下で周りの組織(胸壁、横隔膜)に転移している。
《Ⅲ期》
がんが肺の周りの組織や重要な臓器に広がり、リンパ節にも転移している。
ⅢA期:肺の周りの組織や重要な臓器(横隔膜、胸壁、心臓、大血管、気管、食道など)に浸潤している。がんと同じ側の肺門リンパ節や縦隔リンパ節に転移している。
ⅢB期:肺の周りの組織や重要な臓器(横隔膜、胸壁、心臓、大血管、気管、食道など)に浸潤している。がんと反対側の縦隔リンパ節や肺門リンパ節、肺や首の付け根のリンパ節に転移している。
《Ⅳ期》
肺の中の場所や骨や脳、肝臓、副腎などに転移している(遠隔転移)。胸水にがん細胞がみられる。
〈ICD分類〉
主気管支(肺門部、分岐部)⇒ C34.0
上葉、気管支または肺 ⇒ C34.1
中葉、気管支または肺 ⇒ C34.2
下葉、気管支または肺 ⇒ C34.3
気管支および肺の境界部病巣 ⇒ C34.8
気管支または肺NOS ⇒ C34.9