水疱症 天疱瘡と類天疱瘡

 
やまねこ
水疱症は、人から人にうつる病気ではないニャ

【水疱症とは?】

水ぶくれやびらん(ただれ)を皮膚に生じる病気をまとめた総称を水疱症といいます。ウイルス性や細菌性、やけどなどによる水疱はこの場合除き、免疫の異常によって生じる自己免疫性水疱症と、遺伝子の異常による先天性のものとで、病気を引き起こす原因によって大別されます。したがって、人から人にうつる病気ではありません。自己免疫性水疱症は、水疱が起こる深さによって天疱瘡群と類天疱瘡群に分かれます。

【天疱瘡とは?】

表皮又は粘膜上皮の細胞同士を接着する役割を持つデスモグレインというタンパク質に対する自己抗体が作られることで発症します。表皮細胞の間に自己抗体が沈着することで、皮膚の細胞と細胞が接着することが出来なくなり、水疱が生じます。水疱の膜は薄くびらんになりやすいです。

天疱瘡群の大部分は、尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡です。

《尋常性天疱瘡》

尋常性天疱瘡は最も患者数が多い、古典的な天疱瘡です。体表面や体粘膜のあらゆる部分に対して水疱が大量に発生します。発生した水疱は、弛緩性水疱といってすぐに漏れてしまい、腫れ上がらないのが特徴です。

また尋常性天疱瘡は、粘膜優位型と粘膜皮膚型に分類されます。水疱やびらんが粘膜に出来るのが粘膜優位型で、粘膜だけじゃなく、皮膚にも水疱やびらんが広がるのが粘膜優位型です。

《落葉性天疱瘡》

デスモグレイン1にのみ抗体を持つ患者が発症する病気です。全身に浅い水疱とびらんが出来て、浅いびらんの上に落屑(らくせつ)をつけることが特徴で、尋常性天疱瘡と違って、粘膜に症状が出ることはありません。

《腫瘍随伴性天疱瘡》

リンパ球系の悪性及び良性腫瘍に伴って発症する天疱瘡です。口腔内を中心に、咽頭にかけて広範囲の頬粘膜にびらんや潰瘍が出来ます。

【類天疱瘡とは?】

表皮と真皮の間に自己抗体が沈着し、水疱が表皮または粘膜上皮の下で起こります。水疱の膜は厚く、皮膚の赤み・かゆみを伴うことが多いです。

《水疱性類天疱瘡》

表皮とその下の真皮の接着に重要な役割を持つ、BP180とBP230というタンパク質に対する自己抗体が沈着することで発症します。体や手足にかゆみを伴う浮腫性紅斑や、膜の厚い緊張性水疱、びらんが出来ます。目や口腔の粘膜にも症状が生じることがあるます。

《粘膜類天疱瘡》

主に目や口腔の粘膜に水疱やびらんが生じる類天疱瘡です。のどや鼻、陰部、肛門などにも症状が見られることがあります。びらんが乾いた後、瘢痕を残すこともあります。

《後天性表皮水疱症》

手足の外力のかかる部分を中心に水疱やびらんが生じます。

【治療】

軽症で治療が不要な症例以外では、自己抗体の産生と働きを抑える免疫抑制療法が適応となります。現在では、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の内服が中心になっています。

〈ICD分類〉

尋常性天疱瘡 ⇒ L10.0

増殖性天疱瘡 ⇒ L10.1

落葉状天疱瘡 ⇒ L10.2

ブラジル天疱瘡 ⇒ L10.3

紅斑性天疱瘡 ⇒ L10.4

薬物誘発性天疱瘡 ⇒ L10.5

その他の天疱瘡 ⇒ L10.8

天疱瘡NOS ⇒ L10.9

水疱性類天疱瘡 ⇒ L12.0

瘢痕性類天疱瘡 ⇒ L12.1

小児期の慢性水疱性疾患 ⇒ L12.2

後天性表皮水疱症 ⇒ L12.3

その他の類天疱瘡 ⇒ L12.8

類天疱瘡 ⇒ L12.9