【血管腫・血管奇形とは?】
血管腫とは、血管が拡張したり増殖したりすることによって出来る良性腫瘍のことをいいます。医学的に、血管を形作っている血管内皮細胞の増殖があるものを「血管腫」、血管内皮細胞の増殖がなく、血管が異常に集合しているものを「血管奇形」といいます。
【血管腫・血管奇形の種類】
「血管腫」には、乳児血管腫(いちご状血管腫)や房状血管腫、「血管奇形」には、ポートワイン母斑(単純性血管腫)や海綿状血管腫、動静脈奇形などがあります。
《乳児血管腫(いちご状血管腫)》
生後間もなく出現する紅斑です。盛り上がり始めてから数カ月で腫瘤様に増大し、多くはいちごのように盛り上がった形状となります。1歳のことピークに達し、その後は自然退縮して、多くは学童期までに消失します。
《房状血管腫(血管芽細胞腫》
丘疹や小結節を伴う紅斑、皮下硬結を呈することが比較的多いとされており、痛みを伴う場合があります。小型の病変の場合は、自然退縮することもありますが、大型のものは、カサバッハ・メリット症候群(巨大血管腫内の出血による全身状態の悪化、ときに致死的になる)の原因になりうることがあります。
《ポートワイン母斑(単純性血管腫)》
出生時から存在する扁平なあざです。生まれつきの毛細血管の異常なので、血管腫ではなく、奇形腫に分類されます。毛細血管が異常に増えてしまった場合で、基本的に自然に消えることはなく、ゆっくり色が濃くなったり、大きくなったり、盛り上がることがあるます。ただし眉間や前額正中に生じるものはサーモンパッチと呼ばれ、大部分は自然消退します。またウンナ母斑と呼ばれる、後頸部生じるものも成人までに自然消退することがあります。
《海綿状血管腫(静脈奇形)》
生まれつき静脈の成分が拡張・腫瘤化しているものです。淡い青みを伴っており、部位や大きさ、深さなどは様々です。
《動静脈奇形》
動脈⇒毛細血管⇒静脈という血管の構造をとらず、動脈から静脈に抜けてしまい、血流の速い病変が形成されたものです。動脈の血圧が静脈にかかるので、多くの病変は進行性となります。初期はポートワイン母斑に似た紅班や拍動性の瘤から始まりますが、大きくなると出血や痛みを伴うことがあり、血流が多くなると心臓に負担がかかることもあります。
《リンパ管腫》
リンパ液を含む袋が作られたために腫瘍が出来る疾患です。良性の腫瘍なので、患部が大きくなったり転移したりすることはありません。
【治療】
血管腫には「切除術」「Vビーム(レーザー光で血管を選択的に破壊)」「硬化療法」といった三つの治療法があります。腫瘍や大きさによって治療法が異なります。
「切除術」→ 多くの症例に対応
「Vビーム」→ 単純性血管腫、いちご状血管腫など
「硬化療法」→ リンパ管腫、静脈奇形など
〈ICD分類〉
いちご状血管腫 ⇒ D18.0
海綿状血管腫(静脈奇形)⇒ D18.0
ポートワイン母斑(単純性血管腫)⇒ D18.0
血管腫NOS ⇒ D18.0
リンパ管腫 ⇒ D18.1
脳動静脈奇形 ⇒ Q28.2
末梢性脳動静脈奇形 ⇒ Q27.3
房状血管腫(血管芽細胞腫)⇒ D48.1
※肝血管腫には、D18.0とK76.4のコードがあります。肝血管腫は、そのほとんどが海綿状血管腫と血管内皮腫に大別されます。前者がほとんどでありますが、どちらにしても何も記載がなければ、コードは基本的にD18.0となります。