胞状奇胎

 
やまねこ
状奇胎は、遺伝子の異常ではなく、受精の異常によって生じるニャ

【絨毛】

妊娠すると、子宮内に胎盤を作る絨毛細胞(栄養膜細胞:トロホブラスト)ができます。この絨毛細胞も異常増殖が原因の病態を総称して「絨毛性疾患」といいます。

「絨毛性疾患」は「胞状奇胎」「侵入奇胎」「絨毛がん」「胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)」「類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)」「存続絨毛症(奇胎後hCG存続症)等に分類されます。

【胞状奇胎とは?】

胞状奇胎は、「絨毛性疾患」の一つです。胎盤絨毛における栄養細胞の異常増殖と間質浮腫を特徴とする病変のことをいいます。典型的な例では肉眼的には絨毛の水腫上腫大が特徴的です。

胞状奇胎はすべての絨毛が肉眼で確認できるほどに大きくなった「全胞状奇胎」と、胎児成分が存在し、絨毛の一部のみ大きくなっている「部分胞状奇胎」に分類できます。

また胞状奇胎の約80%は良性です。残りは存続し、周辺組織に広がる傾向があります。これらの奇胎のほとんどは侵入奇胎です。胞状奇胎の約2~3%は絨毛がんになります。絨毛がんは、リンパ管や血流を介して急速に転移することがあります。「胎盤部トロホブラスト腫瘍」と「類上皮性トロホブラスト腫瘍」は極めて稀です。

【全胞状奇胎と部分胞状奇胎】

正常な妊娠は、一つの卵子に一つの静止が受精して受精卵となり、細胞分裂を繰り返して生長し、胎芽、胎児となります。

胞状奇胎は精子と卵子の受精の異常によって生じる異常妊娠です。全胞状奇胎と部分胞状奇胎があります。

胞状奇胎は両親の遺伝子の異常ではなく、受精の異常によって生じます。また胞状奇胎の既往歴のある人や、流産を経験した人は、胞状奇胎が再発されやすいとされています。

全胞状奇胎1倍体の精子23Xが核の不活性化または消失した卵子に受精して入り込み、精子由来の核のみが増殖する異常妊娠です。ほとんどが46XXの2倍体の染色体になります。胎児成分は存在せず、多数の嚢胞状の奇胎のみとなります。全胞状奇胎の約10%が侵入奇胎や絨毛がんに移行するといわれています。

部分胞状奇胎正常な一つの卵子に2つの精子が受精した場合に3倍体69XXX、69XXYとなり、胎児成分と嚢胞状の奇胎の2成分からなり「部分胞状奇胎」と言われています。また2倍体卵子に1倍体の精子が受精することもあり、一方が胞状奇胎、もう一方が正常な胎児として正常分娩に至る稀なケースもあります。全胞状奇胎と比べて、部分胞状奇胎では続発性の悪性度の高い腫瘍の絨毛がんが発生する確率は低いとされています。

【治療】

胞状奇胎およびすべての妊娠性絨毛性腫瘍は、通常は吸引による子宮内容除去術によって完全に取り除きます。子宮摘出術が必要になることは稀です。

奇胎が存続していたり、広がって低リスクと考えられる場合は、化学療法が行われます。化学療法は、1種類の薬剤(メトトレキサートまたはアクチノマイシンD)のみで行われることがあります。この治療に効果がなければ、化学療法薬(エトポシド、メトトレキサート、アクチノマイシンD,シクロホスファミド、およびビンクリスチン)の併用や、子宮摘出術が行われることもあります。

奇胎が広範囲に広がり、リスクが高い場合は、数種類の化学療法薬を使用します。

〈ICD分類〉

古典的胞状奇胎(全胞状奇胎)⇒ O01.0

部分胞状奇胎 ⇒ O01.1

胞状奇胎NOS ⇒ O01.9

絨毛性疾患NOS ⇒ O1.9