中皮腫

 
やまねこ
中皮とは、胸膜、腹膜、心膜のことをいうニャ

【中皮腫とは?】

肺の膜を胸膜、消化器系の臓器の上を覆っている膜を腹膜、心臓の膜を心膜とそれぞれいいます。これらの膜の表面を覆っているのが中皮で、この中皮から発生した腫瘍を中皮腫といいます。

中皮腫は、その発生する場所によって胸膜中皮腫、心膜中皮腫、腹膜中皮腫と呼ばれます。

《胸膜中皮腫》

胸膜の中皮から発生する腫瘍で、良性と悪性があります。良性の中皮腫は孤立性中皮腫または限局性中皮腫とも呼ばれていましたが、現在では孤立性胸膜線維性腫瘍という名称で統一されています。

悪性の中皮腫はアスベスト曝露歴に関係します。病変の広がり方によって、限局性に発育するものとびまん性に発育するものに分類されます。病理学的には、上皮型、肉腫型/繊維型、混合型に分類されます。病状が進行すると、胸壁浸潤、縦隔浸潤、頸部リンパ節転移などを生じます。

《腹膜中皮腫》

アスベストとの関連性が高い胸膜中皮腫に比べ、腹膜中皮腫ではアスベスト曝露歴があるのは15~30%です。ただし、高濃度のアスベスト曝露歴がある割合は、胸膜中皮腫よりも高くなっています。

組織型の分類としては、上皮成分の優勢な上皮型と間葉成分の多い繊維型とに分けられ、胸膜中皮腫にみられるような肉腫型はほとんどありません。

《心膜中皮腫》

心外膜と心嚢の中皮細胞由来で、悪性全体では約1~2%と極めてまれな病気です。胸膜中皮腫や腹膜中皮腫とは異なり、アスベスト曝露歴については関連性がはっきりしていません。細胞診では診断が大変難しい病気です。

【組織型】

上皮型立方状で類円形核を有する異型細胞が管状またはシート状に配列しています。悪性中皮腫の約60%程度がこの型で、抗がん剤などの治療が比較的効くと言われています。

肉腫型骨や筋肉に発生する肉腫と似た組織像を示す型です。紡錘形を有する細胞の束状配列または無秩序な配列を示します。悪性中皮腫の約10~20%がこの組織型です。

線維形成型肉腫型中皮腫の亜型となります。密な膠原線維の増生を伴います。

二相型腫瘍組織内に上皮型と肉腫型とみられる組織型が混在する型です。

【胸膜中皮腫の病期分類】

Ⅰa期壁側胸膜に限局しており、臓側胸膜には腫瘍を認めない。

Ⅰb期壁側胸膜から臓側胸膜に腫瘍が散らばる。

Ⅱ期胸膜のほか肺へ腫瘍が広がる。または胸膜全体に広がる。

Ⅲ期切除可能な範囲で胸壁や縦隔脂肪織などへ広がる。

Ⅳ期横隔膜や縦隔臓器や反対側の胸膜などへ広がり、遠隔の臓器や組織に広がる。

※腹膜や心膜の中皮腫はまれな病気であるため、病期分類はまだ決められていません。

【治療方法】

《外科治療》

早期の限られた病期において考慮されます。胸膜、心膜、横隔膜と肺をひとまとめにすべてを切除する胸膜外肺全摘術が行われます。根治を目指すために胸膜外肺全摘術に化学療法や放射線療法を併用した治療が重要です。

《化学療法》

手術で切除出来ないほど進行してしまった場合に施行されます。また外科治療と併用されることもあります。

葉酸代謝拮酵素を阻害するベネトレキセドと白金製剤のシスプラチンを併用した投与法が現状第一選択肢とされています。

《放射線療法》

放射線を腫瘍が存在する範囲に照射して腫瘍を縮小させる方法で、手術後の再発予防や痛みを緩和する目的で使用されます。

〈ICD分類〉

胸膜中皮腫 ⇒ C45.0

腹膜中皮腫 ⇒ C45.1

心膜中皮腫 ⇒ C45.2

その他の部位の中皮腫 ⇒ C45.7

中皮腫NOS ⇒ C45.9