【結核とは?】
結核とは「結核菌」という細菌が直接の原因となって起こる慢性感染症です。最初は肺炎などの炎症から始まります。初期の炎症が進むと、やがて組織が死んで腐ったような状態になります。この状態の時期が肺結核ではかなり長く続きます。その後、死んだ組織が溶けて、気管支を通して肺の外に排出されると、そこは穴の開いた空洞と呼ばれる状態になります。そして空洞の中には充分な空気があり、肺からの栄養もあるので、空洞は結核菌には絶好の住みかとなり、結核菌はここでどんどんと増殖していくのです。こうして結核菌は、空洞からリンパや血液の流れに乗ったりして病巣の出店を築いていき、肺全体や他の臓器、全身に広がっていきます。ちなみに結核菌が血管を通って全身にばら撒かれている状態を粟粒結核と呼びます。
【肺外結核】
結核は肺以外にも病変を作ります。リンパ節が最も多く、また骨や関節にも出来ます。背骨に出来るのが「脊椎カリエス」です。次に腎臓が多く見られます。腎結核は膀胱などを巻き込むこともよくあります。このほか結核は脳、喉頭、腸、腹膜、また眼や耳、皮膚、生殖器にまでひろがることもあります。
結核性髄膜炎:脳を包んでいる髄膜に結核がたどり着き、そこに病巣を作ることによって起こります。
結核性リンパ節炎:頸部腫瘤の鑑別の一つになります。
結核性心膜炎:収縮性心外膜炎を後遺症として残すことがあります。
結核性腹膜炎:結核によって引き起こされる腹膜炎のことをおいます。
腸結核:結核菌が引き起こす腸炎のことをいいます。典型的には回盲部に起こります。
腎結核:無菌性膿尿の原因の一つとなります。
副腎結核:慢性副腎不全の主な原因となります。
結核性卵管炎:骨盤痛と骨盤腫瘤を生じます。
結核性脊椎炎:胸椎・腰椎の結核症や膝関節などの単関節の結核症が知られています。代表的な疾患は脊椎カリエスです。
皮膚結核:病巣から結核菌が証明されるか否かによって分類されます。前者を真性皮膚結核、後者を結核疹と呼びます。なお、皮膚結核の別称として狼瘡(ろうそう)という語があり、英語ではループスと呼ばれています。
〈真性皮膚結核〉
ⅰ)皮膚初感染病巣
ⅱ)尋常性狼瘡
ⅲ)皮膚腺病
ⅳ)皮膚疣状結核
ⅴ)潰瘍性粟粒結核
ⅵ)急性皮膚粟粒結核
〈結核疹〉
ⅰ)腺病性苔癬
ⅱ)壊疽性丘疹状結核疹
ⅲ)陰茎結核疹
ⅳ)ハザン硬結性紅斑
ⅴ)結核性紅斑
ⅵ)結核性静脈炎
【潜在性結核感染症とは?】
結核菌に感染している可能性が高い状態ですが、発病はしていないため、他の人に感染させる心配がない状態です。無症状病原体保有者ともいいます。
結核に感染すると、2年以内に発病するリスクが一番高いといわれています。ヒドラジド(INH)という薬を6カ月間内服して、発病を抑える効果を期待することが出来ます。内服によって約50%~70%発病を防ぐことが出来、服薬終了後、少なくとも10年以上の効果があるとされています。
【結核の治療法】
1944年に放射菌から作り出されたストレプトマイシンは劇的な効果を上げました。続いて、パス(PAS)、イソニアジド(INH)などが登場し、結核の治療は複数の薬剤の組み合わせによる化学療法で行うことが確立しました。現在抗結核菌として広く認められているものは10種類を超え、標準的な治療は、リファンピシン、イソニアジドの2種類が軸になっています。
〈ICD分類〉
呼吸器結核、細菌学的または組織学的に確認されたもの ⇒ A15.0-9
呼吸器結核、細菌学的または組織学的に確認されないもの ⇒ A16.0-9
神経系結核 ⇒ A17.0-9
その他の臓器の結核 ⇒ A18.0-9
粟粒結核 ⇒ A19.0-9
結核の続発・後遺症 ⇒ B90.0-9