【大腸がんとは?】
大腸がんは、大腸粘膜の細胞から発生します。大腸がんの発生には二つの経路があると考えられています。
1.良性ポリープである腺腫ががんになる経路 ⇒ 腺腫(アデノーマ:adenoma)が発がん刺激を受けてがん化するもので、腺腫-がん連関(adenoma-carcinoma sepuence)とよばれています。
2.発がん刺激を受けた正常粘膜から直接にがんが発生する経路 ⇒ デノボ癌(de novo癌)と呼ばれています。
【大腸がんの肉眼分類】
表在(0型) ※粘膜または粘膜下層までのがんで、隆起型と表面型に分けられます。
隆起型(Ⅰ):有茎型(Ⅰ)、亜有茎型(Ⅰsp)、無茎型(Ⅰs)
表面型(Ⅱ):表面隆起型(Ⅱa)、表面平坦型(Ⅱb)、表面陥凹型(Ⅱc)
腫瘤型(1型):腫瘍全体が塊状となり、腸の内側に出っ張っているもの
潰瘍限局型(2型):腫瘍の中央が陥凹し、周りの盛り上がり(周堤)の境界がはっきりしているもの
潰瘍浸潤型(3型):2型よりも周堤が崩れて、正常な粘膜との境界がはっきりしない部分があるもの
びまん浸潤型(4型):がんが不規則に広がっているもの。スキルス型とも呼ばれることがある
分類不能(5型)
【大腸がんの病理組織学的分類】
大腸がんは大きく分けて、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌があり、その大部分が腺癌となります。
腺癌には高分化型腺癌から低分化型腺癌があり、大腸がんの80~90%が高~中分化型腺癌となります。粘液癌は10%以下です。
大腸がんの大部分は、潰瘍限局型(潰瘍のようなものが出来、その周りにがんが防波堤のように出来る)で、多くは腺管形成の盛んな高分化型腺癌です。
≪旧分類≫
腺癌 adenocarcinoma
1)高分化腺癌 well
2)中分化腺癌 mod
3)低分化腺癌 por
4)粘液癌 muc
5)印環細胞癌 sig
扁平上皮癌 scc
腺扁平上皮癌 asc
≪新分類≫
腺癌
1)乳頭腺癌pap
2)管状腺癌
ⅰ)高分化型 tub1
ⅱ)中分化型 tub2
3)低分化腺癌
ⅰ)充実腺癌 por1
ⅱ)非充実腺癌 por2
4)粘液癌 muc
5)印環細胞癌 sig
扁平上皮癌 scc
腺扁平上皮癌 asc
内分泌細胞癌 ecc
【大腸がんのステージ分類】
がんの広がり具合(進行度)をステージ(病期)で表します。ステージは、がんが大腸の壁に入り込んだ深さ(深達度)、どのリンパ節までいくつの転移があるか(リンパ節の程度)、肝臓や肺など大腸以外の臓器や腹膜への転移(遠隔転移)の有無によって決まります。
ステージ0:がんが粘膜の中にとどまっている。
ステージⅠ:がんが大腸の壁(固有筋層)にとどまっている。
ステージⅡ:がんが大腸の壁(固有筋層)の外まで浸潤している。
ステージⅢ:リンパ節転移がある。
ステージⅣ:血行性転移(肝転移、肺転移)または腹膜播種がある。
【大腸がんのTNM分類】
≪深達度T≫
[漿膜を有する部位の壁深達度]
m:がんが粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない。
sm:がんが粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでいない。
mp:がんが固有筋層にとどまり、これをこえていない。
ss:がんが固有筋層をこえているが、漿膜表面に出ていない。
si:がんが直接他臓器に浸潤している。
[漿膜を有しない部位の壁深達度]
m:がんが粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない。
sm:がんが粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでいない。
mp:がんが固有筋層にとどまり、これをこえていない。
A1:がんが固有筋層をこえているが、さらに深くには浸潤していない。
A2:がんが筋層をこえてさらに深く浸潤しているが他臓器に浸潤していない。
A3:がんが直接多臓器に浸潤している。
≪リンパ節転移:N≫
N0:リンパ節転移のないもの
N1:リンパ節転移が腸管傍もしくは中間リンパ節に1~3個
N2:腸管傍もしくは中間リンパ節のリンパ節転移があるもの
N3:主リンパ節もしくは側方リンパ節に転移があるもの
※リンパ節は大腸の壁へ栄養を送る血管沿いに存在します。大腸近くのリンパ節(腸管傍)もしくは少し離れたところに3個以内の転移であればN1、4個以上であればN2、栄養する根本のリンパ節に転移を認めればN3ということになる。
≪遠隔転移:M≫
M0:遠隔転移のないもの
M1:遠隔転移を認めるもの
≪肝転移:H≫
H0:肝臓への転移を認めない。
H1:肝臓への転移が4個以下かつ最大径が5㎝以下
H2:H1、H3以外
H3:肝臓への転移が5個以上かつ最大径が5㎝をこえる。
〈腹膜転移:P〉
P0:腹膜への転移を認めない。
P1:近傍の腹膜にのみ播種性転移を認める。
P2:遠隔の腹膜に少数の播種性転移を認める。
P3:遠隔の腹膜に多数の播種性転移を認める。
【大腸がんの広がり方】
大腸がんは大腸の粘膜に発生した後、大腸で増殖して大きくなるとともに転移により全身に広がっていきます。
転移とは、最初にがんが発生したところから離れた場所に飛び火して増殖することです。大腸がんの広がり方には、浸潤、リンパ行性転移、血行性転移、腹膜播種があります。
浸潤:腸の一番内側の粘膜に出来た大腸がんが、腸の壁を破壊しながらだんだん大きくなり、最後に腸の壁に破って周囲の臓器に広がっていくことです。
リンパ行性転移:リンパ行性転移とは、リンパ管に侵入したがん細胞が、途中のリンパ節に流れ着いて増殖することをいいます。
血行性転移:血行性転移とは、がん細胞が腸の細い静脈に侵入し、大腸から離れた臓器に流れ着いてそこで増殖することをいいます。
腹膜播種:種が蒔かれるようにがんが転移することをいいます。
〈ICD分類〉
結腸上皮内がん ⇒ D01.0
直腸S状結腸上皮内がん ⇒ D01.1
直腸上皮内がん ⇒ D01.2
肛門部および肛門管上皮内がんn ⇒ D01.3
大腸上皮内がんNOS ⇒ D01.4
盲腸がん ⇒ C18.0
虫垂がん ⇒ C18.1
上行結腸がん ⇒ C18.2
右結腸曲〈肝弯曲〉がん ⇒ C18.3
横行結腸がん ⇒ C18.4
左結腸曲〈脾弯曲〉がん ⇒ C18.5
下行結腸がん ⇒ C18.6
S状結腸がん ⇒ C18.7
結腸の境界線病巣 ⇒ C18.8
大腸がんNOS ⇒ C18.9
直腸S状結腸がん ⇒ C19
直腸がん ⇒ C20