子宮内膜症

 
やまねこ
子宮内膜症は、月経を経験する回数が多いほど発症率が高くなるニャ

【子宮内膜症とは?】

子宮内膜とは、受精卵が着床する場所です。エストロゲンやブロゲステロンなど女性ホルモンの働きによって妊娠に向けて増殖・成熟が促されますが、排卵後2週間ほど経っても着床がない場合は、子宮内膜が子宮の壁から剥がれ落ちて出血とともに体外へ排出されます(月経)。そして月経が終了すると、次の妊娠の機会に備えて再び子宮内膜の増殖が開始されます。

子宮内膜とは、この本来なら子宮の内側を覆っているはずの子宮内膜が子宮の内腔以外の部位に発生し、発育を続ける病気です。20~30歳代の若い世代の女性に発症することが多いとされています。

【発生部位】

子宮内膜症が出来やすい場所として、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支えている靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などがあげられます。稀に肺や腸に出来ることもあります。

【原因と症状】

原因ははっきりとわかっていないものの、女性ホルモンの作用によって引き起こされていると考えられています。また経血がおなかの中に逆流する現象が発症に関わっているという説もあり、初潮が早い・妊娠回数が少ない・性周期が短いなど、月経を経験する回数が多い人ほど子宮内膜症の発症率が高くなることがわかっています。

症状として代表的なものは痛みと不妊です。進行すると月経痛が悪化するだけでなく、慢性的な腰痛や下腹部痛、排便時や性交時の痛みなどが現れるようになります。まれに尿管や腸管の閉塞が起こることもあります。また肺に発症した場合は、気胸を伴うことが知られています。

【進行期分類】

《Beecham分類》

第Ⅰ期骨盤内蔵器、漿膜面に散在する1~2㎜の病変、開腹時のみ発見される。

第Ⅱ期仙骨子宮靭帯、広靭帯、子宮頸部後壁あるいは卵巣に限局性の硬結を触れ、癒着のないもの

第Ⅲ期卵巣が少なくとも正常の2倍以上に腫大し、仙骨子宮靭帯、子宮後壁直腸、付属器に癒合が存在し、子宮の移動が制限されているもの。

第Ⅳ期ダグラス窩が閉塞し、骨盤内蔵器が癒着のため一塊となり、個々の臓器を区別できないもの。

【主な病変】

卵巣チョコレート嚢胞子宮内膜が卵巣内に存在するために、生理の際に出血した血液が行き場を失い、酸化してチョコレートのような嚢胞として留まってしまっている状態。卵巣内で炎症が起き、排卵に影響することもあるため、排卵障害といった不妊につながることもあります。

子宮腺筋症通常子宮内膜が存在するのは子宮の内側ですが、子宮の筋肉層の中に内膜が存在し、増殖してしまうのが子宮腺筋症です。痛みがより強い傾向があり、生理のたびに筋層内で出血して炎症を繰り返すため、経過とともに筋層が線維化し、子宮が肥大していくこともあります。

腹膜病変数㎜径の透明、赤色あるいは青黒色の結節が主体です。

DIE腹膜表面から5㎜以上浸潤し病変と定義されています。一般的に、直腸やS状結腸、直腸膣中隔、膀胱子宮窩に瘤状の腺筋症様病巣を呈します。

【治療】

子宮内膜症の治療には、大きく分けると手術療法と薬物療法があり、場合によっては両者を併用して行います。

《薬物療法》

まずは痛みを緩和するため、ボルタレンをはじめとする鎮痛剤、プロスタグランディン合成阻害剤が用いられます。細菌では鎮痛剤が無効な人には、ロイコトリエン受容体拮抗剤が有効ともいわれています。

[偽妊娠療法]

薬剤ピルによって「妊娠しているのと同様の状態」にする治療です。最近では副作用も少ない低用量ピルを使用します。

[偽閉経療法]

ダナゾールやGnRHアゴニストなどの薬物投与によって閉経期同様のホルモン状態にする治療です。

《手術療法》

腹腔鏡あるいは開腹術を用いた癒着剥離術、チョコレート嚢胞切除術、病巣蒸散術、仙骨子宮靭帯切断術などが行われます。

〈ICD分類〉

子宮腺筋症 ⇒ N80.0

チョコレート嚢胞 ⇒ N80.1

卵巣子宮内膜症 ⇒ N80.1

卵巣内膜症性嚢胞 ⇒ N80.1

卵管子宮内膜症 ⇒ N80.2

骨盤子宮内膜症 ⇒ N80.3

腸の子宮内膜症 ⇒ N80.5

皮膚瘢痕における子宮内膜症 ⇒ N80.6

その他の子宮内膜症 ⇒ N80.8

子宮内膜症NOS ⇒ N80.9