再生医療のキーとなる幹細胞①

肝細胞と聞いてもピンとこないかもしれませんが、iPS細胞なら聞いたことがある人が多いと思います。そうです。京都大学の山本伸弥教授がノーベル賞をもらった研究ですね。

幹細胞とは、自己複製能と様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持つ特殊な細胞のことです。トカゲの尻尾を切っても、切り口から尻尾がまた生えてきますが、ようするにそうやって失ったものをもう一度再生することが出来る細胞のことをいいます。

IPS細胞とは、その幹細胞の分類の一つなのですが、ほかには胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞などがありますね。

そのうち現在最も医療への応用に近づいているのは成体幹細胞といわれています。成体幹細胞(体性幹細胞・組織幹細胞ともいう)は、もともとわたしたちの体の中で働いている細胞です。血液細胞を作る造血幹細胞や肝臓の細胞を作る肝臓細胞、それに産後のへその緒から取り出すことが出来る臍帯血幹細胞などがこれにあたりますね。成体幹細胞は、体内に存在する数が少なく、体外で増殖、維持するのが難しいという課題がある一方で、人間が本来体の中に持っているものであるため、すでに白血病の治療などでは利用されています。

一方で、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞は人工的に作られた幹細胞です。

胚性幹細胞(ES細胞)は、受精卵後、胚盤胞の段階に発生した胚より分離されて、株化された幹細胞です。ほぼすべての組織(細胞)への分化能を有する万能細胞と考えられますが、胚の滅失に関わる倫理問題や拒絶反応の問題があります。

iPS細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)のそうした問題をクリアした幹細胞です。患者の皮膚などの悲痛の細胞に4つの因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を導入して作り出すことに成功しました。患者自身の細胞から作るので、拒絶反応が起こらず、胚を使うわけではないので、倫理問題もありません。

ただ胚性幹細胞(ES細胞)もiPS細胞も現状では腫瘍を作りやすいという問題があります。iPS細胞については、さらに遺伝子を細胞に導入する際にも腫瘍形成のリスクがあります。

でも、こうした安全性に関する問題を乗り越えて、より広範囲に再生医療に応用が出来るようになれば、それによって治る病気やケガも増えるし、助かる命もたくさん出てきます。まだまだ乗り越えなければならない問題はあると思いますが、これからも研究の躍進に期待していきたいですね。