妊娠高血圧症候群

 
やまねこ
妊娠中毒症は、妊娠高血圧症候群の昔の言い方だニャ

【妊娠高血圧症候群】

妊娠高血圧症候群(HDP)とは、妊娠中に起こる高血圧症候群の総称です。

病型を分類すると、

妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠と呼びます。

一方で妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧のみ発症する場合を妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合を妊娠高血圧腎症と分類します。2018年からは蛋白尿を認めなくても肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育が不良になれば、妊娠高血圧腎症と分類されるようになりました。

妊娠高血圧症候群は妊婦の20人に1人の割合で起こると言われています。妊娠34週未満で発症した場合は重症化しやすく、注意が必要です。

重症化すると、母体に、血圧上昇、蛋白尿に加えて、けいれん発作(子癇)、脳出血、肝機能障害、腎機能障害、肝機能障害に溶血と血小板減少を伴うHELLP症候群などを引き起こすことがあります。また胎児にも、常位胎盤早期剥離、胎児機能不全、胎児死亡などが起こることがあります。

※妊娠高血圧症候群は、過去には「妊娠中毒症」と呼ばれていました。これは、高血圧・蛋白・浮腫が3大症状と考えられている中で、浮腫だけが単独で現れる場合は、正常なケースも多いという実情があったからです。病態の主体は「高血圧」であり、蛋白尿、浮腫は高血圧に伴って起こる随伴的な症状という考えから「妊娠高血圧症候群」と名称が変更されました。

【原因】

原因ははっきりとわかっていません。ただ元々糖尿病、高血圧、腎臓の病気などを患っていたり、肥満、母体が40歳以上、家族に高血圧の人がいる、多胎妊娠、初産婦、以前に妊娠高血圧症候群の既往がある、といった人は妊娠高血圧症候群を患うリスクが高いといわれています。

【分類】

高血圧合併妊娠妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合をいいます。

妊娠高血圧症妊娠20週以降に初めて高血圧のみを発症し、分娩後12週までに正常に戻る場合をいいます。妊娠高血圧症を発症した人の一部は、妊娠高血圧腎症に移行すると考えられています。

妊娠高血圧腎症妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、かつ蛋白尿を伴うもので分娩後12週までに正常に戻る場合をいいます。全身の臓器に何らかの障害が出ている状態です。子癇、腎障害、肺水腫、DIC、胎児機能不全などの重大な合併症を生じやすく、厳重な管理とその患者に適した分娩時期・方法の決定が重要になります。

子癇子癇とは妊娠20週以降に初めてけいれん発作を起こし、その原因として、てんかんや二次性けれんが否定されるものです。発作の時期により、妊娠子癇、分娩子癇、産褥(分娩が終わった後の期間)子癇に分けられます。

HELLP症候群妊娠後期または分娩時に生じる母体の生命の危険に伴う一連の症候群を示す状態です。3大徴候(溶血性貧血、肝逸脱酵素上昇、血小板低下)の敬語の頭文字をとって名付けられています。妊娠高血圧症候群に伴うことが多く、またその後に子癇を発症することも多いです。

【治療】

妊娠高血圧症候群でも妊娠高血圧腎症の診断を受けた場合は、重症度いかんに関わらず、に入院管理が原則となります。妊娠高血圧症候群の根本的な治療は妊娠の終了、つまり分娩を行うことです。

〈ICD分類〉

妊娠、分娩および産褥に合併する既存の高血圧 ⇒ O10.0-9

増悪した蛋白尿を伴う既存の高血圧性障害 ⇒ O11

妊娠高血圧症 ⇒ O13

妊娠中一過性高血圧症 ⇒ O13

軽度妊娠高血圧症候群 ⇒ O14.0

軽度妊娠高血圧腎症 ⇒ O14.0

重症妊娠高血圧症候群 ⇒ O14.1

重症妊娠高血圧腎症 ⇒ O14.1

HELLP症候群 ⇒ O14.2

早発性妊娠高血圧症候群 ⇒ O14.9

遅発性妊娠高血圧症候群 ⇒ O14.9

妊娠高血圧症候群NOS ⇒ O14.9

妊娠高血圧腎症NOS ⇒ O14.9

妊娠子癇 ⇒ O15.0

分娩子癇 ⇒ O15.1

産褥子癇 ⇒ O15.2

子癇NOS ⇒ O15.9

詳細不明の母体の高血圧 ⇒ O16