【糖尿病網膜症とは?】
網膜には、光を電気信号に変える神経細胞があります。それらは水晶体・硝子体を経て入ってきた光の情報を脳に送る重要な役割を担っています。
それらの神経細胞に酸素や栄養を与えているのが、網膜に広がる毛細血管です。糖尿病で血統コントロールが悪い状態が続くと毛細血管が悪くなって細小血管症を起こしますが、網膜も例外ではなく血管障害が起こります。これが糖尿病網膜症です。
糖尿病網膜症が酷くなると、網膜出血や網膜剥離などが起こって視力が低下し、失明したりすることもあります。
【糖尿病網膜症の重症度分類】
≪改変Davis分類≫
1)単純網膜症・・・網膜にある毛細血管が高血糖のためにもろくなります。その結果、毛細血管が瘤のようになったり、毛細血管から血液が漏れたり、漏れ出た血液中のタンパク質や脂質の成分が網膜に沈着したりします。
2)増殖前網膜症・・・毛細血管の障害がさらに進むと毛細血管が閉塞して網膜の中に酸素や栄養が行き渡らない部分が出来ます。その近くにある細小血管は拡張、蛇行などの異常を示し、神経も血が足りないためにむくんでしまいます。
3)増殖網膜症・・・毛細血管が閉塞して足りなくなった酸素を補うために、網膜から新生血管が出来ます。新生血管はもろくて簡単に壊れてしまうために大きな出血を硝子体中に起こしてしまいます(硝子体出血)。新生血管の周りに増殖膜と呼ばれる組織が出来、それが網膜を引っ張って網膜剥離を引き起こすことがあります。硝子体出血や網膜剥離、は、視力低下や失明の原因となります。
※ 糖尿病黄斑浮腫・・・糖尿病黄斑浮腫とは、網膜の中の黄斑というものを見る上で最重要な部分にむくみが起きることをいいます。糖尿病黄斑浮腫は、網膜症のどの段階でも起こる可能性があり、硝子体出血や網膜剥離の有無にかかわらず、黄斑浮腫があるだけで視力低下が起きる原因となります。
≪福田分類≫
福田分類とは、糖尿病網膜症の症状がどのあたりまで進行しているのかを示す分類方法です。
◎福田分類では、まず糖尿病網膜症を大きく二つに分けています。
「良性糖尿病網膜症(A)」・・・糖尿病がコントロールされていれば悪化も少ないタイプ。
「悪性糖尿病網膜症(B)」・・・糖尿病がコントロールされていてもレーザー網膜光凝固術や硝子体手術などの特別な眼科的治療をしないと進行してしまうタイプ。
◎また福田分類では、糖尿病網膜症の重症度を1~6期に分けています。
1期:眼底に小さな出血が見られる時期。血糖の治療で治る可能性あり。
2~3期:出血の数や量が増えます。また出血以外に浮腫なども見られるようになります。3期では目がかすむ等、自覚症状が出るようになります。この時期ではレーザー光凝固術という治療を行います。
4~5期:眼底出血が眼球内部全体に広がり、視力が急速に低下します。
6期:末期です。ほぼ失明状態で、回復の見込みはほとんどありません。
◎改変Davis分類との対応
[良性網膜症(A)]
A1:軽症単純網膜症
A2:重症単純網膜症
A3:軽症増殖停止網膜症
A4:重症増殖停止網膜症
A5:重症増殖停止網膜症
[悪性網膜症(B)]
B1:増殖前網膜症
B2:早期増殖網膜症
B3:中期増殖網膜症
B4:末期増殖網膜症
B5:末期増殖網膜症
〈ICD分類〉
糖尿病網膜症 ⇒ E10-4.3† H36.0*
増殖性糖尿病網膜症 ⇒ E10-4.3† H36.0*
糖尿病黄斑浮腫 ⇒ E10+4.3† H36.0*