【糖尿病神経障害とは?】
糖尿病神経障害は、腎症、網膜症とともに糖尿病に特異な三大合併症に数えられています。腎症や網膜症が糖尿病になって自覚症状がないまま10~15年経過し、病状が重くなってから気が付くことが多い合併症であるのに対し、神経障害は糖尿病になってから5年くらいと、初期の段階で手足の痺れなどの症状が現れます。
【糖尿病神経障害の原因】
神経障害になる原因としては主に三つあります。一つは、高血糖が長い期間続くことで体内の余分なブドウ糖が変換されるソルビトールという物質です。二つ目は、糖化によって産生された終末糖化産物(AGEs)、三つ目は糖化によって神経に栄養を送る細い血管の血流の低下(細小血管障害)です。
【糖尿病神経障害の分類】
末梢神経障害には、痛みや温度を感じる感覚神経、手や足を動かす運動神経、心臓や胃腸など内臓の働きを調整する自律神経があります。
糖尿病神経障害は、左右対称性に体の遠いところに多方面に現れる(広汎性)多発神経障害と、体のある部分のみに現れる単神経障害に分けられます。
多発神経障害は、さらに感覚運動障害と自律神経障害に分けられます。
1)(広汎性)多発性神経障害
≪感覚運動神経障害≫
糖尿病神経障害の中核であり、最も多い症状です。典型的には足指や足底などの下肢末端から左右対称性に始まります。そのうちに症状は上行し、足首や下腿に拡がります。その後上肢末端(指・手)に現れます。
≪自律神経障害≫
心臓・循環器系、消化器系、泌尿器・生殖器系、皮膚などの諸臓器の働きの調節や発汗による体温調節、血圧の維持などを担う自律神経に障害をきたし、多彩な症状をきたすようになります。
自律神経に障害が起きると、心臓や血圧に、立ち眩み、頻脈などの異常が現れます。また消火器症状として下痢や便秘、膀胱が収縮しなくなり排尿障害や勃起障害なども現れます。
[糖尿病多発神経障害簡易診断基準]
必須項目(以下の2項目を満たす)
- 糖尿病が存在する。
- 糖尿病多発神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる。
条件項目(以下の3項目のうち2項目以上を満たす)
- 糖尿病多発神経障害に基づくと思われる自覚症状
- 両側アキレス腱反射の低下あるいは焼失
- 両側内踝振動覚低下
〈ICD分類〉
糖尿病末梢性多発神経障害 ⇒ E10-4.4† G63.2*
糖尿病自律神経障害 ⇒ E10-4.4† G99.0*
2)単神経障害
神経に栄養を供給している細い血管が、小さな血栓によって詰まり、神経に血液が通わなくなることで、その部分にのみ非対称性に現れる障害です。顔面神経麻痺や急に物が二重に見えたりする動眼神経麻痺、急に片側の難聴が生じる聴神経麻痺、それに手根管症候群、糖尿病筋委縮などがあります。
〈ICD分類〉
糖尿病末梢性単神経障害 ⇒ E10.4.4† G59.0*
糖尿病筋委縮 ⇒ E10-4.4† G73.0*