【閉塞性動脈硬化症(ASO)とは?】
心臓から出た血液は全身の臓器にくまなく流れていきます。この血液の通り道である血管が動脈硬化によって、狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)すると、血液の流れが悪くなる血行障害が起こります。
この血行障害が手足などの末梢の血管(ほどんどが足)に生じた状態を、閉塞性動脈硬化症(ASO)といいます。国際的には、末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれるものです。
【原因と症状】
閉塞性動脈硬化症(ASO)の原因は、動脈硬化となります。したがって、動脈硬化をもたらす、糖尿病や脂質異常症、高血圧、喫煙、高齢化などが元々の原因となります。
最も典型的な症状が、間欠性跛行と呼ばれる歩行障害です。「間欠性」とは、間隔をおいて、起きたり起きなかったりすること、「跛行」とは、引きずるように歩くことを意味します。また閉塞性動脈硬化症(ASO)の裏には、冠動脈疾患や脳血管疾患など重大な全身血管障害が隠れている可能性があります。閉塞性動脈硬化症(ASO)が重症化した場合の2年生存率は5割程度、中程度の症状でも5年で3割程度の予後しかありません。
【閉塞性動脈硬化症(ASO)と急性動脈閉塞症の違い】
閉塞性動脈硬化症(ASO)が、動脈硬化によって徐々に進行して起こる病気であることに対し、急性動脈閉塞症は、急に下肢動脈が詰まってしまう病気です。最も多いのは、心臓に出来た血栓が心臓から下肢動脈に流れ、下肢動脈で詰まってしまう病態です。心臓に血栓が出来る原因の多くは心房細動です。
【閉塞性動脈硬化症(ASO)の重症度分類と治療法】
《ファンテイン分類》
Ⅰ度:無症状
⇒ 治療法:禁煙、動脈硬化因子の管理・治療、フットケア
Ⅱa度:軽度跛行
⇒ 治療法:Ⅰ度の治療法を含め、薬物療法、運動療法
Ⅱb度:中等度から重度跛行
⇒ 治療法:Ⅱ度の治療法を含め、血行再建術
Ⅲ度:安静時疼痛
⇒ 治療法:血行再建術(カテーテル術、バイパス術)、血管新生療法
Ⅳ度:虚血性潰瘍・壊疽
⇒ 治療法:血行再建術(カテーテル術、バイパス術)、血管新生療法、創部処置
【治療法】
《薬物療法》
抗血小板薬:血小板の働きを抑えて血液をさらさらにし、血栓の予防や動脈硬化の進行を抑えます。⇒ アスピリン、チクロピジンなど
末梢血管拡張薬:血管を広げ末梢の血流を改善します。⇒ PGE1製剤のアルプロスタジルアルファデスクスなど
抗凝固薬:血小板が固まるのを抑えて血栓を予防します。⇒ ヘパリン、ワルファリンなど
《血行再建術》
[カテーテル治療]
大腿動脈や上腕動脈から、カテーテルを挿入して行います。バルーンのついたカテーテルで狭窄や閉塞を広げ、ステントを留置して押し広げます。
[手術治療]
狭窄や閉塞している動脈の内膜を取り除く血栓内膜摘除術と、狭窄や閉塞の上流から下流に血液を流すためのバイパス術があります。
血栓内膜摘除術は、大腿動脈に行うことが最も多く、バイパス手術で代表的なものは、太ももの動脈が閉塞した(浅大腿動脈閉塞)時に行う、大腿動脈-腋窩動脈バイパス術です。
〈ICD分類〉
下肢閉塞性動脈硬化症 ⇒ I70.20
末梢動脈硬化症 ⇒ I70.20
下肢閉塞性動脈硬化症・壊疽あり ⇒ I70.21
末梢動脈硬化症 ⇒ I70.21
閉塞性動脈硬化症NOS ⇒ I70.90
※「壊疽あり」で細分類に1をコードした場合は、R02のコードはつけません。
間欠性跛行 ⇒ I73.9
下肢急性動脈閉塞症 ⇒ I74.3
〈ICD9-CM〉
冠動脈以外の血管形成術 ⇒ 39.50
冠動脈以外のステント挿入術 ⇒ 39.90
動脈内膜切除術 ⇒ 38.10-6,8
大腿動脈-大腿動脈(F-F)バイパス術 ⇒ 39.29
大腿動脈-腋窩動脈(F-P)バイパス術 ⇒ 39.29