【大動脈解離とは?】
大動脈は胸部から腹部にかけて位置している心臓から全身への血液を流す動脈の本管です。大動脈の壁は、その内側から内膜、中膜、外膜の三層で構成されています。大動脈解離は、このうちの内膜に出来た傷から中膜の中に血液が流れ込んで裂けてしまい、大動脈の薄い壁の中に血液が流れ込むことで真腔と偽腔という二つの血液の流れる道が出来てしまう病気です。
【時期による分類】
急性期:2週間以内
亜急性期:3週間から2ヵ月以内
慢性期:2ヵ月以降
【部位による分類】
《Stanford(スタンフォード)分類》
スタンフォードA型:心臓に近い上行大動脈が解離した場合に分類されます。心タンポナーデや急性心筋梗塞、脳梗塞、大動脈弁閉鎖不全など、急死する危険性の高い合併症を伴うことが多いため、緊急手術が必要となります。
スタンフォードB型:上行大動脈に解離がない場合に分類されます。
《DeBakey(ドベーキー分類)》
ドベーキーⅠ型:内膜亀裂が上行大動脈に始まり、上行大動脈~下行大動脈~腹部大動脈にまで広範囲に管理が及ぶタイプ。
ドベーキーⅡ型:内膜亀裂が上行大動脈に始まり、上行大動脈に解離が限局するタイプ。
ドベーキーⅢa型:内膜亀裂が弓部大動脈遠位部に始まり、解離が下行大動脈に限局するタイプ。
ドベーキーⅢb型:内膜亀裂が弓部大動脈遠位部に始まり解離が下行大動脈~腹部大動脈に及ぶタイプ。
【治療】
手術が必要な状態は以下のような場合です。
急性A型大動脈解離:緊急手術
急性B型大動脈解離:瘤径が5㎝以上・分枝の血流障害・切迫破裂
慢性A型大動脈解離:瘤径が5㎝以上(5㎝以下の場合も経過観察が必要)
慢性B型大動脈解離:瘤径が5㎝以上(5㎝以下の場合も経過観察が必要)
《外科治療》
外科治療としては、人工血管置換術が行われます。取り換える範囲は通常は上行大動脈あるいは上行大動脈から弓部大動脈です。最近はオープンステント法といって、人工血管にバネがついたステントグラフトを使用することで末梢側吻合が簡略化されるようになりました。また発症後早い時期に解離の原因となった内膜亀裂部をステントグラフトの内挿により塞ぐ血管内治療が行われるようになっています。
〈ICD分類〉
大動脈解離 ⇒ I71.0
〈ICD9-CM〉
置換を伴う血管切除、腹部の血管 ⇒ 38.44
置換を伴う血管切除、胸部の血管 ⇒ 38.45
冠動脈以外のステント挿入術 ⇒ 39.90
腹部大動脈の血管内へのステント内挿術 ⇒ 39.71