増殖する良性の卵巣病変には、嚢胞(主に機能性嚢胞)と腫瘍があります。
【卵巣嚢胞とは?】
卵巣嚢胞とは、卵巣内やその表面に内部に液体成分を含む構造物が生じた状態を指します。ほとんどの場合、月経周期と関連して発生する機能性嚢胞です。
通常一つの卵胞(卵巣内の液体で満たされた空洞)には一つの卵子が入っています。一回の月経期間につき、一個の卵胞から一個の卵子が放出され、乱視が放出された卵胞は消失します。しかし排卵が起こらないと、卵胞が大きくなり続けて大きな嚢胞を形成することがあります。これが機能性嚢胞です。
機能性嚢胞は、月経のある女性の約1/3にみられます。閉経後に発生することはほとんどありません。
《機能性嚢胞の種類》
卵胞嚢胞:卵胞内で卵子が成長する過程で発生します。
黄体嚢胞:卵胞が破裂して卵子を放出した後に形成される組織(黄体)から発生します。出血がみらえる場合や破裂することがあります。
※機能性嚢胞は通常、数日から数週間で自然に消失します。
【卵巣嚢腫とは?】
卵巣に出来た腫瘍のうち、良性であたかも風船に水が溜まったような腫瘍を卵巣嚢腫といいます。卵巣腫瘍の80~90%は卵巣嚢腫であると考えられています。
卵巣嚢腫は一般に症状がないのが特徴です。ただし腫瘍が大きくなると、下腹部が出てきて気づくことや茎捻転(けいねんてん:嚢腫の根本が捻じれること)を起こした時には下腹部に激しい痛みが生じることがあります。
《卵巣嚢腫の種類》
漿液性嚢胞腺腫:水のような液体が溜まった腫瘍で、最も多い腫瘍です。
粘液性嚢胞腺腫:どろどろとした粘液が溜まった腫瘍です。
皮様嚢腫・成熟嚢胞性奇形腫・デルモイドシスト・類皮嚢腫:毛髪や歯、脂肪などが入った腫瘍です。
【治療】
直径約5㎝未満の卵巣嚢胞は通常時に治療をしなくても消失します。ただし直径が約5㎝以上あり、消失しない嚢胞は切除が必要になることもあります。嚢胞が悪性である場合は、同じ側の卵巣と卵管も摘出します。
〈ICD分類〉
卵巣卵胞嚢胞 ⇒ N83.0
黄体嚢胞 ⇒ N83.1
出血性黄体嚢胞 ⇒ N83.2
卵巣萎縮 ⇒ N83.3
卵巣ヘルニア ⇒ N83.4
卵管捻転 ⇒ N83.5
卵巣茎捻転 ⇒ N83.5
卵巣捻転 ⇒ N83.5
卵管留血腫 ⇒ N83.6
子宮広間膜内血腫 ⇒ N83.8
傍卵管嚢胞 ⇒ N83.8
卵管破裂 ⇒ N83.8
卵巣破裂 ⇒ N83.8
卵巣出血 ⇒ N83.8
卵巣腫瘤 ⇒ N83.9
黄体腫 ⇒ D27
卵巣嚢腫 ⇒ D27
卵巣嚢腫茎捻転 ⇒ D27 N83.5
卵巣嚢腫破裂 ⇒ D27
卵巣成熟嚢胞性奇形腫 ⇒ D27
卵巣線維腫 ⇒ D27
卵巣粘液性腺腫 ⇒ D27
卵巣良性腫瘍 ⇒ D27
卵巣漿液性腺腫 ⇒ D27
〈ICD9-CM〉
腹腔鏡下卵巣局所切除術 ⇒ 65.25
卵巣局所切除術 ⇒ 65.29
腹腔鏡下片側卵巣摘出術 ⇒ 65.31
片側卵巣摘出術 ⇒ 65.39
腹腔鏡下卵管卵巣摘出術 ⇒ 65.41
片側卵管卵巣摘出術 ⇒ 65.49