【内視鏡的治療】
内視鏡的粘膜切除術(EMR):胃の粘膜の病変を引き上げて鋼鉄ワイヤー(スネア)をかけて焼却切除する方法です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):電気メスのナイフを用いて、病変の粘膜下層まで剥離して切除する方法です。
【外科的治療】
≪胃全摘術≫
胃上部にかかる胃がんで、幽門部側の胃を半分以上残すことが困難な場合に選択する手術方法です。
切除する部分:噴門、幽門を含めた胃の全体
再建方法①:食道と空腸、および空腸同士を吻合(ルーワイ法)
再建方法②:食道と十二指腸の間に空腸を置いて吻合(空腸間置法)
≪幽門側胃切除術≫
噴門部にかからない胃がんに対して行われる手術方法です。
切除する部分:幽門部を含めて胃の出口側約2/3を切除します。
再建方法①:噴門側の残胃と十二指腸または小腸を繋ぎ合わせます(ビルロードⅠ法)
再建方法②:十二指腸の断端を縫合閉鎖して、胃の断端と空腸を繋ぎ合わせます(ビルロードⅡ法+ブラウン吻合)
再建方法③:噴門側の残胃と小腸を繋ぎ合わせます(ルーワイ手術)
≪噴門側胃切除≫
胃上部の早期胃がんで、幽門側の胃を半分以上残すことが可能な場合や食道胃接合部がんに選択される手術方法です。
切除する部分:噴門部を含めて胃の上部約1/3から1/2の範囲を切除します。
再建方法①:食道と残胃の間に空腸を繋ぎ合わせます。食べ物は食道から空腸を通るルートと、食道・空腸・残胃を通るルートの2つの通り道が出来ます。
再建方法②:食道と残胃を繋ぎ合わせます。残胃から食道への逆流防止のために、つなぎ目に逆流防止弁を作成します。
≪拡大手術≫
進行した胃がんに対して行う手術です。
手術する部分:胃ばかりでなく、膵臓、脾臓、大腸などを一緒に手術したり、さらに遠くのリンパ節を切除する手術も行われます。
≪姑息的手術≫
胃がんを治すという目的ではなく、胃がんによる症状を取るために行う手術です。
胃がんのために食べ物が通らなくなっているところにバイパスをつける手術や、胃がんの腹膜転移が腸に及んで腸閉塞となった場合などに、バイパスをつける手術があります。
【胃がんのリンパ節郭清の適応】
D1郭清:EMR・ESDの対象とならないT1a、および1.5㎝以下の大きさの分化型T1bで、N0のもの。
D1+(D1+)郭清:上記以外のT1腫瘍で、N0のもの。
D2郭清:治癒切除可能なT2以深の腫瘍、およびN(+)のT1腫瘍
D2+(D2+)郭清:D2を超える拡大リンパ節郭清
【抗がん剤治療】
≪胃がん治療に用いられる主な抗がん剤≫
フルオロウラシル(5-FU)
イリノテカン(略称:CDDP 商品名:カンプト、トポテシン)
シスプラチン(略称:CDDP 商品名:ランダ、ブリプラチン)
タキサン系薬剤のパクリタキセル(略称:PTX 商品名:タキソール)
ドセタキセル(略称:TXT 商品名 タキソテール)
デガフール・キメラシル・オテラシルカリウム配合(略称:S-1 商品名:TS-1)
カンペシタビン(商品名:ゼローダ)
トラスツズマブ(分子標的薬 商品名:ハーセプチン)
≪主な治療法≫
TS-1:術後の再発防止で推奨されている抗がん剤がTS-1です。生存期間の延長が見られました。
TS-1+シスプラチン:切除不能の進行がん、再発胃がんに対して、最も推奨されている組み合わせです。腫瘍を縮小させる効果が高く、生存期間の延長も見られました。
※ただしTS-1はカプセル剤なので、経口不可の場合は使えません。
〈ICD9-CM〉
胃の病変または組織の局所切除術または破壊術 ⇒ 43.41-9
食道への吻合を伴う胃の部分切除術 ⇒ 43.5
十二指腸への吻合を伴う胃の部分切除術(ビルロードⅠ法)⇒ 43.6
空腸への吻合を伴う胃の部分切除術(ビルロードⅡ法)⇒ 43.7
空腸間置を伴う胃の部分切除術(空間間置法)⇒ 43.81
胃全摘術 ⇒ 43.0-9